別居時にあった財産を使われてしまった!財産分与として支払わせたい場合の対処方法

別居したときには財産があったのに、別居後に相手が使ってしまうケースが少なくありません。そんなとき、相手は「使い得」になってしまうのでしょうか?

法律上、「使い得」は認められていません。別居後に財産を使われた場合でも、相手に別居時にあった財産の半分を請求する権利が認められます。

今回は別居時にあった財産を相手が使ってしまった場合の対処方法や使い込みを防ぐ方法をお伝えします。

別居後の財産使い込みが心配な方はぜひ参考にしてみてください。

1.別居後に財産を使われるケースでよくあるパターン

別居後にあった財産を別居後に使われてしまうケースとしては、以下のようなパターンがよくあります。

1-1.退職金を使い込まれる

定年退職すると、まとまった退職金が入ってきます。退職金も財産分与の対象資産です。
別居時には預金口座に高額な退職金が入金されていたのに、別居後に浪費されてしまうケースは頻繁にあります。

1-2.生命保険を解約される

別居時に生命保険に加入していたら、生命保険の解約返戻金相当額が財産分与の対象になります。それにもかかわらず、相手が別居後に解約して解約返戻金を使い込んでしまうケースが少なくありません。

1-3.不動産を売却される

家やマンションが相手名義になっている場合、別居後に相手が不動産を勝手に売却してしまう可能性もあります。

別居後に財産を使い込まれるケースは意外と多いので、別居する際には財産の保全を万全にすべきといえるでしょう。

2.別居後に使い込まれた財産は取り戻せる

それでは別居後に財産を使い込まれた場合、もはや取り戻しはできないのでしょうか?
法律上、そういった結論にはなりません。もし取り戻しができなければ「使ったもの勝ち」「使い得」となって、非常に不公平かつ不当な結果になるためです。

別居後に財産を使い込まれた場合でも、財産は「あるもの」として財産分与ができます。
この問題は「財産分与の基準時」と関係するので、以下でみてみましょう。

2-1.財産分与の基準時とは

財産分与を行う際には「基準時」が問題となります。
基準時とは「いつの時点の財産を基準に財産分与を行うか」というタイミングです。

離婚するまで同居を続けたケースであれば離婚時に存在する財産が財産分与の対象になりますが、離婚前に別居した場合には別居時に存在した財産が分与の対象になります。

別居するまでは夫婦の家計が1つであり、形成した資産が「夫婦共有財産」となるからです。一方、別居後は家計が分かれるので、形成した資産は共有になりません。

よって、別居時に存在した財産は「すべてあるもの」として財産分与を行うのが原則です。別居後に財産が増えても減っても財産分与に影響しません。

相手が別居後に財産を使い込んでも、使い込まれた財産は無視して「別居時の財産」を前提に財産分与を行えます。

2-2.別居後に増えた分も考慮しない

離婚前に別居すると、別居後に財産が増えるケースもあります。
たとえば別居後に夫婦の一方が株式運用でもうけた場合や給料などの収入によって預金が増加した場合などです。
その場合、相手に多めの財産を分け与えなければならないのでしょうか?

法律上、そういった結論にはなりません。あくまでも財産分与の基準時は別居時で、別居時の財産を基準に財産分与を行うからです。別居後に財産が殖えても相手に分与する必要はありません。相手が殖やした財産についても分与を求められないと考えましょう。

3.別居後に使い込まれた場合の財産分与計算の具体例

別居時には3000万円の夫名義の財産があったけれども別居後に夫が使い込み、2000万円に減ってしまった事案を考えてみます。
この場合、妻は夫に対して「3000万円」を基準に財産分与を請求できます。
3000万円の2分の1が妻の取り分なので、1500万円を受け取る権利があるのです。
そこで妻は夫から1500万円分の財産を分与してもらえます。夫は先に1000万円使っているので残りの500万円のみを取得します。

4.相手がお金を持っていない場合の対処方法

別居時に存在した財産を基準に分与を請求できるとはいっても、相手が実際にお金を持っていないケースは多々あります。そんなとき、どのようにして払わせれば良いのでしょうか?

4-1.分割払いをさせる

1つめの対処方法は、不足する分を分割払いしてもらう方法です。
たとえば1000万円を一括で払えなくても分割払いなら払える人が多いでしょう。
なお分割払いを認める際には、必ず合意書を公正証書にすべきです。
公正証書を作成しておけば、相手が支払いを怠ったときにすぐに相手の資産や給料などを差し押さえられます。この点は重要なので、後の項目で詳しくご説明します。

4-2.援助を受けてもらう

相手に資力のある親族がいる場合には、援助を受けてもらうよう要請するのも1つです。
たとえば相手が若くて親が健在な場合などには、支援してもらえるケースも珍しくありません。

4-3.借り入れをしてもらう

相手に借り入れをしてもらって一括で払わせる方法もあります。

  • 銀行ローンやカードローン
  • 職場からの借り入れ
  • 親族や友人知人などからの借り入れ

離婚問題を円満に解決するのと引き換えに、上記のような融資、借り入れを要請しましょう。

ただし借り入れは強要できません。脅迫的な手段で借り入れをさせると強要罪や恐喝罪が成立してしまう可能性もあるのでやってはいけません。不安があるなら弁護士へ代理交渉を任せましょう。

5.対象財産が不明な場合の対処方法

相手が財産を使い込んだ可能性があるけれども、具体的にどういった財産があったのか、またあるのかわからない場合も考えられます。
財産分与の対象が不明な場合には、調査をしなければなりません。

5-1.自分で調査する

まずは、自分で以下のような財産が存在しないか調べましょう。

  • 預金
  • 保険
  • 株式や投資信託などの投資財産
  • 不動産
  • 動産類
  • 退職金

退職金については、まだ入金されていない将来の分も財産分与対象になります。

5-2.弁護士に依頼する

自分でできる財産調査には限界があります。
金融機関も保険会社の証券会社も「契約者本人」でないと取引内容を開示しないのが通常だからです。

財産調査が困難な場合、弁護士へ相談しましょう。
弁護士が「弁護士法23条照会」という手続きを行えば、保険会社や証券会社は財産開示に応じるケースが少なくありません。
弁護士法23条照会とは、弁護士が職権によってさまざまな事項を調査できる手続きです。照会された人や機関には回答義務もあるので、回答を得られる可能性は比較的高いといえます。

たとえば保険会社であれば相手の保険契約内容を開示する可能性があり、証券会社であれば相手がその証券会社で取引している株式や投資信託などの情報を提供する可能性があります。

困ったときには1人で悩まず弁護士へ相談しましょう。

6.財産分与のポイント

相手が財産を使い込んだ場合など、財産分与の際に知っておきたいポイントをお伝えします。

6-1.財産を適切に評価する

財産分与の際には「評価」が非常に重要です。
財産分与の基準時が別居時なので「別居時の資産残高」を明らかにしましょう。
間違って「現在の価値」で評価してしまわないように注意が必要です。

たとえば以下のような金額が評価額となります。

  • 預金...別居時の預金残高
  • 保険...別居日における解約返戻金相当額
  • 不動産...別居時点における時価
  • 株式...別居日や直近の証券取引所営業日における終値
  • 退職金...別居時点における退職金見込額

自分で適切に各種の財産評価を行うのは困難です。迷ったときには弁護士へご相談ください。

6-2.分割払いの場合には期限の利益喪失約款をつける

使い込まれた財産を分割払いで払ってもらう場合には、必ず「期限の利益喪失約款」をつけましょう。期限の利益喪失約款とは、相手が一定額以上滞納したら分割払いができなくなるという取り決めです。相手が期限の利益を喪失すると、そのときの残金を一括払いしなければなりません。
相手にとってもこのことがプレッシャーとなり、きちんと払おうとするモチベーションにつながります。

6-3.遅延損害金を設定する

相手が支払いを遅延した場合の遅延損害金も設定しましょう。遅れると遅延損害金を払わねばならないなら、相手はきちんと払おうとするからです。
法定利率は年率3%ですがそれより高く定めることも可能です。たとえば年率14.6%などに設定しておくと良いでしょう。

6-4.合意書は公正証書にする

分割払いを認める場合には、必ず合意書を公正証書にしましょう。
公正証書がなかったら、あらためて調停や審判をしないと相手の財産の差し押さえができません。そういった手続きをしている間に相手が財産を隠してしまう可能性も大いにあります。

公正証書に「強制執行認諾条項」をつけておけば、相手が支払いを滞納した場合にすぐに強制執行(差し押さえ)ができます。回収可能性が大きくアップするので、相手と合意するときにはひと手間かけても公正証書を作成しておくべきといえます。

7.相手による別居後の使い込みを防ぐ方法

別居後に使い込まれてしまうと、相手に資産がない限り分割払いさせるなどの方法をとらねばなりません。
より確実に財産分与を受けるには、相手に使い込みをさせないことが一番です。

別居後の相手による使い込みを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

この場合、「仮差押」という方法が有効です。仮差押とは、相手の財産を仮に差し押さえて凍結させる手続きです。
たとえば預金を仮差押すると相手は入出金ができなくなりますし、不動産を仮差押したら売却や抵当権設定などができなくなります。保険や株式なども仮差押の対象になります。

仮差押を行うには複雑な手続きを行わねばならないので、相手による使い込みが心配な場合には弁護士へ相談しましょう。

8.離婚問題はDUONへおまかせください

財産分与で不利にならないためには、法律的な正しい考え方を理解しておく必要があります。特に別居後の使い込みを防ぐためには、相手が使ってしまう前に迅速に対応しなければなりません。使い込まれた場合でも、少しでも財産を保全するためスピーディかつ的確に行動する必要があります。
DUONでは離婚問題に積極的に取り組んでいますので、財産分与をはじめとした離婚問題にお悩みの場合、お早めにご相談ください。

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