熟年離婚とお金について押さえておきましょう

【熟年離婚】第1回 熟年離婚で損をしないために

近年,同居期間が25年~30年以上の夫婦の離婚が急増しています。

熟年離婚も離婚である以上,一般的な離婚と同じ手続で進められますが,熟年離婚に特有の問題や留意すべき事項があるため,きちんとした知識をもって対応することが必要になります。

そうはいっても,熟年離婚に絞って解説した書籍等はまだまだ少なく,具体的にどのような点に留意したらよいかわからないという方が多いのではないでしょうか。

このコラムの目的は,熟年離婚特有の問題点に焦点を当てながら,離婚手続の進め方を,効率よく学習することにあります。

全5回のコラムを通じて,熟年離婚の基礎から考え方をマスターしてください。

各回のコラムのテーマは、下記になります(コラムのテーマは変更される場合があります)。

熟年離婚の特徴~動く金額が大きい~

熟年離婚にスポットを当ててみると,他の離婚との違いがあることに気づかれると思います。

熟年離婚に直面する夫婦は,結婚生活が長いため,婚姻中に築いた財産も多くなるのが一般です。また,すでにお子さんが成人している,あるいは,成人前であっても,高校や大学に通う年齢になっているというケースがほとんどです。

そのため,若い夫婦であればあまり問題にならない財産分与が最大の争点となることが多い一方,若い夫婦間で深刻な紛争となりやすい親権やお子さんとの交流といった事項は,あまり問題にならない傾向にあります。

住宅の分与

若い夫婦の場合,不動産を所有していても,多額の住宅ローンが残っているというケースが多いため,不動産を売却することを前提に解決を考えることができません。住宅ローンをいずれが負担するかという点でもめるために,全体の解決が長引いてしまうことが珍しくないのです。

一方で,熟年離婚の場合は,住宅ローンが残っていないか,残っていても,預貯金に比べて低額であるため,残ローンを完済して売却を検討することが可能です。そのため,住宅が足かせとなり,解決が長引くということが少ない傾向にあります。

熟年離婚のお考えの方は、まず、住宅について住宅の時価額やローンの残高等を把握し、ご自分が住宅をどのように処分したいのかを考えましょう。

退職金の分与

熟年離婚に特有の問題の一つとして,退職金の清算が挙げられます。

熟年離婚に直面している夫婦の場合,勤続年数が長く,また,退職金の受給まで比較的間がないケースが多いことから,若い夫婦と異なり,退職金の清算がクローズアップされやすい傾向にあります。

退職金については、後にお話しします。

年金分割

結婚生活中長く専業主婦をされていた方は,年金分割の手続を行わなければ,将来受給する年金が極端に減ってしまう,あるいは,ほとんどもらえないという事態に陥ってしまいます。熟年離婚のケースでは,離婚してから老後の生活に備えるというのでは遅すぎます。

特に,女性の場合は,老後を少しでも安心して生き抜くために,年金分割の手続を怠らないようにしましょう。

慰謝料

離婚に至る原因が,もっぱら夫婦の一方にある場合,他方の配偶者は,慰謝料を請求することができます。この慰謝料は,婚姻期間が長いほど高額化する傾向にありますから,熟年離婚では,慰謝料もまた,見過ごせない条件となるのです。

このように,熟年離婚では,通常の離婚に比べて動くお金が大きく,対応を誤ると大変な事態に陥ってしまうことがあります。そのため,弁護士費用をかけてでも,法律上可能な主張をしていくメリットが大きいタイプの事件といえます。

財産分与~将来の退職金~

退職金を清算しなくて良い場合がある

退職金は,給料の後払い的な性格が強く,婚姻中に夫婦の協力によって築かれた財産といえるため,預貯金や不動産と同じように,財産分与の対象となり得ます。

このうち,将来支給される退職金が清算の対象になるか否かは,退職金が「いつ支払われるか」によって異なります。

そもそも,離婚時点で現実に支払われていない退職金は,将来,確実に支給されるかどうかわかりません。将来支給されない可能性が高いにも関わらず,その退職金が支払われることを前提に,これを清算することはできません。

具体的には,退職までの年数が長ければ長いほど,退職金が支給されるか否かは不確実になるといえましょう。

例えば,退職金の支給時期が離婚から20年先という場合,そもそも本当に支払われるかどうかわからず,また,具体的な支給金額も不確定というケースが多いのです。このような場合,退職金を財産分与の対象とすることは困難です。

これに対し,熟年離婚の場合は,退職時期が比較的近い将来であることが多く,退職金の具体的金額も算出しやすいことから,退職金が財産分与の対象になるケースが少なくありません。

退職までどの程度の期間があれば財産分与の対象となるかという点については,公務員か否かお勤めの会社等によっても異なります。

自分の退職金が清算対象となってしまうのか,将来支給されるはずの退職金のいくらかを分与してもらえるのか,ご心配な方はDUONにご相談ください。

実際に支払われる金額とは異なる

清算の対象となる退職金は,原則として,婚姻期間中の労働に相当する部分に限られます。

財産分与は,夫婦の協力によって築いた財産を,離婚にあたって清算するという制度ですから,支給された,あるいは支給される予定の退職金の全額が,無条件に清算の対象となるというわけではありません。

例えば,平成元年1月に就職,平成2年1月に結婚,平成24年12月に別居,平成25年6月に離婚,平成25年12月に退職したというケースにおいて,清算の対象となる退職金は,平成2年1月の結婚から平成24年12月の別居までの期間分に「相当」する退職金に限られるのです。

したがって,清算の対象となる退職金と,実際に支払われる退職金の金額は,必ず一致するわけではないのです。

将来の退職金の清算対象額をどう評価するか

清算の対象となる退職金を評価するためには,さまざまな計算方法があります。

実務上は,別居時に自己都合退職したと仮定した場合の退職金の額を算出し,これを清算対象の基礎とすることが多いように思われます。多くの企業の場合,退職金規程を設けており,人事部等に照会すれば退職金の金額が算出されますので,まず,これを算出することが必要になります。

これに対し,「将来(定年退職時)支給される退職金」をベースとして,ここから別居後の勤続期間に相当する分を差し引いたうえ,中間利息を控除して,清算対象額を算出する方法もあります(東京地判平成11年9月3日)。

具体的な事案ごとの評価方法は,こちらをご参照ください。

 

第2回に続く

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