離婚協議書が必要な理由、作成上の重要ポイントを弁護士が解説
離婚協議書を作成するときには、いくつか重要なポイントがあります。
夫婦で話し合って合意した内容を正しい方法で書面化して、将来のトラブルを防止しましょう。
今回は離婚協議書を作成する理由や注意すべきポイントを解説しますので、これから協議離婚される方はぜひ参考にしてみてください。
1.離婚協議書を作成すべき理由
協議離婚の際には、子どもの親権者さえ決まれば「離婚届」を役所に提出するだけで離婚できます。
離婚条件について細かく記載した「離婚協議書」の作成は必須ではありません。実際に、離婚協議書を作成せず離婚届だけ提出して離婚してしまう方も多数おられます。
しかし「離婚協議書」は必ず作成しておくべきです。離婚協議書とは、夫婦が合意した離婚条件を書き込んで夫婦双方が署名押印して完成させる書類をいいます。「離婚協議書」を作成しておかないと、どういった離婚条件で合意したのか後々明らかになりません。
離婚後に慰謝料請求や財産分与請求、養育費請求などが行われてトラブルになる可能性があります。
慰謝料については離婚後3年間、財産分与の請求や年金分割は離婚後2年間請求可能ですし、養育費や面会交流は子どもが成人するまで請求できます。
離婚が成立しても離婚条件の合意を書面化しなければ紛争の蒸し返しになってしまう可能性が高いので、協議離婚するなら必ず離婚協議書を作成してください。
2.離婚協議書に記載すべき内容
離婚協議書に記載すべき主な事項は以下のとおりです。
作成する際、各事項について漏れがないかチェックしましょう。
・離婚の合意
夫婦が「離婚」に合意したことを明らかにします。
・親権
未成年の子どもがいる場合、親権者を明記しましょう。
・養育費
子どもの養育費をいくらにするのか、いつどのように支払うのか記載します。
・面会交流
離婚後、別居親と子供との面会交流の方法も定めておくとトラブル防止になります。
・財産分与
夫婦共有財産がある場合、どのようにして分配するのか明らかにしましょう。
・慰謝料
不貞(不倫)や暴力、モラハラや生活費不払いなどの事情によって離婚するなら、被害者側は慰謝料請求が可能です。具体的にいくらの慰謝料をいつまでにどうやって支払うのか記載しましょう。
・年金分割
一方または双方が厚生年金に加入していれば年金分割が可能です。特に「合意分割」が必要なケースでは、必ず年金分割についての合意事項を記載しましょう。
・清算条項
離婚協議書に書き込んだ以外には夫婦間に債権債務関係がないことを明らかにします。
3.財産分与と慰謝料、養育費の違い
離婚の際、支払われるお金には「財産分与」「慰謝料」「養育費」があります。
これらはまったく異なる意味合いを持つので、違いを把握しておきましょう。
3-1.財産分与
夫婦共有財産を分割することです。預貯金や不動産、保険などの財産を夫婦間で基本的に2分の1ずつに分けます。どちらかに有責性があるかどうかは問題になりません。
3-2.慰謝料
夫婦のどちらかに暴力、不貞などの有責性がある場合に被害者側が請求できるお金です。
どちらにも有責性がない場合、請求できません。金額はケースによって異なりますが法的な相場は存在します。
3-3.養育費
養育費は子どもの学費や生活費などの費用です。別居親が同居親に対し、子どもが成人するまで分割で支払うのが通常です。
裁判所の定める基準があるので、その範囲で定めるとよいでしょう。
なお離婚後お互いの収入額に変更があったり再婚したりすると、金額が変わる可能性があります。
4.養育費や慰謝料代わりに住宅ローンを払う場合
協議離婚の際、養育費や慰謝料に代えて住宅ローンを払う約束をするケースも少なくありません。
たとえば妻と子どもがこれまで通り家に住み、夫は居住しないけれど養育費や慰謝料の代わりに住宅ローンを払う場合などです。
こういった合意も有効ですが、法的な強制執行ができません。公正証書で「住宅ローンを支払う」と約束しても強制できないので、その限界についてはあらかじめ把握しておく必要があるでしょう。
5.清算条項の重要性
離婚協議書には必ず「清算条項」を入れましょう。
清算条項とは「ここに定める以外に債権債務がない」と確認する条項です。清算条項がないと、後日財産分与や慰謝料の請求が行われて紛争の蒸し返しになるリスクが残ります。
6.公正証書化する
離婚協議書を作成したら、必ず公正証書にまとめましょう。公正証書化しておけば、支払い義務者が約束通りに支払いをしなかったとき、すぐに強制執行が可能となります。
また公正証書の原本は公証役場で保管されるので、紛失や書き換え、破棄などのリスクも避けられます。「勝手に偽造された」などと言われるトラブルも予防できるでしょう。
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