スピード離婚するときに必須の知識~慰謝料や財産分与、子どもに関する取り決め~

「生涯を共にする」と誓って結婚しても、期待していた生活と違ってすぐに離婚してしまう夫婦が少なくありません。

結婚後1~2年以内の離婚を「スピード離婚」とよぶことがよくあります。

芸能人カップルでもスピード離婚する夫婦が多く、ときおりニュースなどで取り上げられているので聞いたことがある方もいるでしょう。

スピード離婚するときには、慰謝料や財産分与、子どもの問題など注意すべき点がいくつもあります。

今回は結婚後1~2年のスピード離婚を検討している方が知っておくべき法律知識を弁護士がお伝えします。

スピード離婚とは

スピード離婚とは、一般的に結婚後1~2年で離婚してしまうことです。
ただしスピード離婚は法律用語でも専門用語でもなく明確な定義もないので、人によって異なる意味にとらえている可能性があります。

特に厳密に考える必要はなく「結婚後数ヶ月や1年、2年以内に早期に離婚すること」と理解しておくとよいでしょう。

スピード離婚と財産分与

スピード離婚するときにも、財産分与請求できる可能性はあります。しかしスピード離婚の場合、財産分与額は極めて少額か、請求できないケースも多いので注意すべきです。

スピード離婚で財産分与請求が難しい理由

スピード離婚で財産分与請求が難しくなるのは、財産分与対象資産が少なくなるためです。

財産分与(清算的財産分与)は、夫婦が婚姻中に形成した資産を分け合う手続きをいいます。
すなわち財産分与の対象になるのは「婚姻期間中に積み立てた資産のみ」なので、婚姻期間の短いスピード離婚の場合、どうしても対象資産が少額になってしまうのです。

夫婦のどちらかが独身時代から所持していた財産は、財産分与の対象になりません。
たとえ相手が資産家でお金持ちであっても独身時代の財産を分与してもらえないので、受け取れる額は少額になってしまう可能性が高くなります。

財産分与対象資産の例

スピード離婚であっても、婚姻中に夫婦が協力して積み立てた以下のような資産があれば財産分与対象になります。

  • 預金、現金
  • 保険
  • 不動産
  • 株式、投資信託
  • 電子マネー
  • 仮想通貨
  • 貴金属や時計などの動産類

スピード離婚と借金、ローンの関係

結婚後、夫婦で住宅ローンを組んで家を購入した場合、スピード離婚したらローンはどのように清算すべきなのでしょうか?

離婚したからといって、住宅ローン名義を変更できるわけではありません。
名義変更には金融機関の同意が必要です。
基本的には離婚後もローン名義人が住宅ローンを払っていかねばならないと考えましょう。

ただし家の財産分与額を計算するとき、家の価値から住宅ローン残高を差し引けます。
スピード離婚の場合、ほとんどローンを払えていないため、多くの場合にはオーバーローン物件となるでしょう。その場合、自宅の価値は「マイナス」になるので財産分与対象になりません。

生活費のためにカードローン等で借金した場合、預金や保険などのプラスの資産額から差し引きが可能です。ただし借金の名義人は変更できないので、借金の半額を相手に払わせることはできません。
また生活と関係のない無関係な借財を負った場合には財産からの差し引きもできません。
たとえばギャンブルや浪費のために借金した場合、離婚後も名義人が個人的に全額払う必要があります。

スピード離婚と年金分割

スピード離婚するときにも、夫婦の双方または片方が厚生年金に入っていれば年金分割できます。
ただしスピード離婚の場合、年金分割してもあまり影響がないケースが多数です。
年金分割は、婚姻期間中に払い込んだ年金保険料を分割する制度だからです。

年金分割の対象になるのは「婚姻期間中に払い込んだ保険料」のみなので、婚姻期間の短いスピード離婚の場合、影響が非常に小さくなります。老齢になったときに移譲される年金額は、月に数百円~多くても2000円程度となるケースが多いでしょう。

とはいえ少額ではあっても年金分割は可能ですし、具体的な移譲金額は状況に応じて異なります。「スピード離婚だから年金分割しても意味がない」と決めつける前に、弁護士に相談していただけましたら状況に応じてアドバイスをいたします。

スピード離婚と慰謝料

「スピード離婚する場合、慰謝料請求できないのでしょうか?」というご相談を受けるケースもあります。

スピード離婚では、慰謝料請求できる場合とできない場合があります。

慰謝料請求できる場合

スピード離婚で慰謝料請求できるのは、相手に有責性が認められる場合です。
有責性とは、「婚姻関係を破綻させても良い」という考えのもとに夫婦関係を破壊する行動をとった責任です。
たとえば以下のような行動があったら、相手に有責性が認められて慰謝料請求できます。

不貞

相手が別の異性と肉体関係をもって不倫、浮気した場合です。

暴力

相手から暴力を受けた場合です。

モラハラ

相手から侮辱されたり異常に束縛されたりして精神的に追い詰められた場合です。

生活費の不払い

相手が一家の大黒柱であるにもかかわらず、生活費をもらえなかった場合です。

家出

相手が正当な理由なく家出してしまった場合にも慰謝料請求できます。配偶者が不倫相手と同棲したり生活費も払ってくれなかったりすると、慰謝料額は高額になります。

同居の拒否

正当な理由なしに同居を拒否された場合にも慰謝料が発生します。たとえば相手が里帰り出産して、その後夫婦の自宅に戻ってこなかった場合などです。

正当な理由のない性交渉の拒否

相手が病気でもなくその他の正当な理由もないのに性交渉を拒否し続けて婚姻関係が破綻してしまった場合、慰謝料請求が認められる可能性があります。

慰謝料請求できない場合

スピード離婚でも、以下のような場合には慰謝料請求が困難となります。

  • 性格の不一致
  • 生活習慣が合わない
  • 思想や信条が合わない
  • 金銭感覚が違う
  • 相手の実家と折り合いが悪い

日本で離婚理由として特に多いのは「性格の不一致」です。
スピード離婚するご夫婦も「思っていたのと違う」「同居したら嫌な面がたくさん見えてきた」などの理由で離婚を希望する方が多いでしょう。
しかし性格の不一致を理由に慰謝料請求はできません。
相手に特に有責性が見当たらないからです。

スピード離婚における慰謝料の金額

スピード離婚する場合、一般的な離婚のケースより慰謝料額が低くなる可能性が高いと考えましょう。
たとえば不貞行為による慰謝料額は、通常の離婚のケースでは100~300万円程度が相場ですが、スピード離婚の場合、100万円やそれ以下になる可能性があります。
DBやモラハラ、生活費不払いや家出などの慰謝料額は、50万円以下になるケースも少なくありません。

スピード離婚で慰謝料額が減額されるのは、婚姻期間が短い分「精神的苦痛」が小さいと考えられるためです。
慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償金なので、苦痛が大きければ慰謝料額も上がります。
婚姻期間が長かったり子どもがいたりすると、婚姻関係破綻による精神的苦痛は大きくなるものです。
一方、婚姻関係の短いスピード離婚の場合、子どもがいないケースも多く離婚によるダメージは小さいと考えられます。
そこで一般的なケースより慰謝料額が減額されやすくなるのです。
具体的な金額は状況によって異なるので、スピード離婚で慰謝料請求したい方は弁護士へご相談ください。

スピード離婚と子ども

スピード離婚するご夫婦の間に子どもがいる場合や妊娠中に離婚する場合に取り決めるべき内容をお伝えします。

親権

離婚後は、父親か母親どちらかの単独親権となります。
スピード離婚の場合、子どもは乳児でしょうから多くの場合には母親が親権者となるでしょう。裁判所で争った場合にも、乳児の親権者としては母親を指定されるケースが多数です。

ただし話し合って両者が納得すれば、父親が引き取って親権者となることも可能です。

養育費

未成年の子どもがいるなら、養育費の取り決めをしましょう。

スピード離婚の場合、親権者にならない親はほとんど子どもと関わる機会がないため、心情的に養育費を払いたくない方も多くいらっしゃいます。
相手に養育費を要求しても拒否されるかもしれません。

しかし親である以上は養育費を支払うべき義務を負います。取り決めをしないと離婚後に養育費調停をしなければならないので、離婚時に話し合って決めておくべきです。

養育費の金額は、父親と母親の年収のバランスによって決まります。
裁判所の相場を参考にしながら、支払い可能な金額を定めましょう。

面会交流

離婚後の面会交流の方法も定めておくようお勧めします。
スピード離婚の場合、子どもが乳児なので親権者の同席のもと、30分程度面会するなど子どもに負担をかけない方法を定めましょう。
相手が子どもと直接会わなくても良い場合、写真を送るなどの方法をとってもかまいません。

子どもの戸籍

妊娠中に離婚して離婚後に出産する場合でも、離婚後300日以内に生まれたなら、婚姻中の夫が父親と推定されるので、認知する必要はありません。

ただし出産前の離婚でも出産後の離婚であっても、子どもの離婚後の戸籍は父親(婚姻中の筆頭者)の戸籍に残ります。
母親が自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所で子の氏の変更許可申立をしなければなりません。

スピード離婚にはメリットもデメリットもあります。迷ったときには弁護士がアドバイス致しますので、お気軽にDUONまでご相談ください。

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