長期間別居している場合に離婚する流れと注意点

5年や10年以上の長期にわたって夫や妻との別居生活が続き「離婚しよう」と決意した方からのご相談をお受けする機会がよくあります。

長期間の別居生活が続いている場合、スムーズに離婚できないケースが少なくありません。
財産分与や慰謝料請求などの考え方も同居中の離婚と異なる可能性があります。

今回は長期間別居している方が離婚する際の注意点を弁護士の視点からお伝えします。

長期間別居となる4つの原因

長期間、離婚もせずに別居し続ける原因として、よくあるのは以下のような理由です。

相手が離婚に応じない

自分は離婚したくても、相手が離婚に応じなければ協議離婚や調停離婚はできません。
かつて離婚を打診したところ、頑なに拒否されてやむなく別居し、以後何年もの間別居生活が続いているケースがよくあります。

不倫して別居状態になった

夫婦の一方が不倫したのをきっかけに別居する事例も多数あります。
不倫した配偶者が離婚を希望しても、相手が応じなければ離婚できないからです。不倫して離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められません。
不倫した配偶者が家出して不倫相手と同棲を開始し、夫婦が別居状態となってしまうケースもあります。

離婚条件が合わずに別居状態が続いている

夫婦の双方が離婚に同意したけれども、離婚条件の話し合いがかみあわずに別居状態を続けるケースもあります。離婚調停を行ったけれど不成立になったり取り下げたりして、訴訟までは起こさずに別居を続けるご夫婦もあります。

子どもが大きくなるまで待つ

子どもが小さい場合、子どもが小中高等学校を卒業したり成人したりするまで離婚を待つご夫婦も多いでしょう。
子どものためとはいえ同居が苦痛になり、途中で別居状態となって長年が経過するパターンがあります。

事情はさまざまですが、どれだけ別居を長く続けても自然には離婚は成立しません。正式に離婚したいなら、協議離婚や調停離婚などの手続きを進める必要があります。

長期間別居と婚姻費用のリスク

夫婦の別居中は、婚姻費用が発生し続けます。
婚姻費用とは、夫婦が互いに分担しなければならない生活費です。
夫婦には相互扶助義務があり、収入の高い側は低い側へ生活費として婚姻費用を払わねばなりません。
子どもがいなければ離婚した相手へ生活費を払う必要はありませんが、離婚しない限りは夫婦のみでも延々と婚姻費用と払い続ける必要があります。
また子どもがいる場合でも、離婚後の養育費よりも離婚前の婚姻費用の方が高額になります。婚姻費用には子どもの養育費だけではなく配偶者の生活費が含まれるからです。

婚姻費用を支払う側の配偶者にとっては、長期間別居を続けるより離婚に進める方が経済的メリットを得られるといえます。

相手が離婚に応じる場合の離婚の進め方

長期間別居している配偶者が離婚に応じる場合、以下の手順で離婚を進めましょう。

離婚を打診する

まずは相手に「正式に離婚したい」と希望を伝える必要があります。
電話やメール、LINE、会って話す際など、普段やり取りしている方法を利用して意思表示しましょう。

交渉する

相手が離婚に応じるなら、協議離婚が可能です。離婚条件の交渉に取り掛かりましょう。
未成年の子どもがいない場合、定めるべき条件は以下の3つです。

  • 慰謝料...どちらかに有責性がある場合、被害を受けた側は相手へ慰謝料請求できます。ただし長期間別居状態が続いている場合、証拠がないなどの事情で慰謝料請求が難しくなる可能性があります。
  • 財産分与...夫婦共有財産を分配します。財産分与の基準時は「別居時」となるので、長期間別居している場合には現在の資産額が対象になるわけではありません。
  • 年金分割...夫婦のどちらか一方や双方が厚生年金に加入している場合、年金分割できます。長期間別居していれば、分割対象の金額は大きくなります。

夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、以下の条件も定めなければなりません。

  • 親権者...離婚後、子どもが成人するまでの親権者を定めます。長期間別居している場合、現在子どもと一緒に住んでいる親が親権者となるケースが多数です。
  • 養育費...親権者にならなかった親が離婚後に養育費を払います。同居親を親権者とする場合、これまで払っていた婚姻費用が不要になって養育費を払うと考えましょう。配偶者の生活費負担がなくなる分、養育費になると支払い金額が減額されます。
  • 面会交流の方法...別居親と子どもが面会したり電話やLINEなどで連絡を取り合ったりする方法を取り決めましょう。今までも面会交流を行っていたなら、同じ方法を継続してもかまいません。

公正証書を作成する

離婚条件が整ったら、合意内容をまとめた離婚公正証書を作成しましょう。
公正証書があれば、支払い義務者が不払いを起こしたときに債権者側がすぐに差し押さえができるので、不払いトラブルが起こりにくくなります。
原本が公証役場に残るので、紛失や書き換えなどの危険もなくなりますし、合意内容が明確になって無効や取り消しなどのトラブルも発生しにくくなるメリットがあります。

相手が離婚に応じない場合の離婚の進め方

長期間にわたって別居している場合、相手に離婚を打診しても無視されたり拒否されたりする可能性が相応に高くなります。
相手が離婚に応じないなら、以下の手順で離婚を進めましょう。

離婚調停を申し立てる

話し合いでは離婚できない場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てる必要があります。
調停では調停委員が間に入り、調整を行ってくれます。
財産分与や慰謝料などの問題についても調停案を出してくれるので、夫婦双方が受け入れれば調停を成立させられます。
ただし調停には強制力がありません。調停委員が説得しても相手がどうしても離婚に応じない場合や離婚条件で合意できない場合、調停は不成立になります。

離婚訴訟を起こす

調停が不成立になっても離婚したい場合、離婚訴訟を起こす必要があります。
訴訟では、相手が合意しなくても「法律上の離婚原因」があれば裁判所が判決で離婚を認めてくれます。
法律上の離婚原因となるのは以下の5つの事情です。

  • 不貞...相手が別の異性と肉体関係をもって不貞行為をした場合です。
  • 悪意の遺棄...相手が生活費を払ってくれなくなったり、家出されて見捨てられたりした場合です。
  • 3年以上の生死不明...別居している相手とまったく連絡をとれず、3年以上生死不明であれば訴訟で離婚できる可能性があります。
  • 回復しがたい精神病...長期間別居している相手が重度な精神病であれば離婚できるケースもあります。ただし精神病で離婚するには「これまで献身的に看護してきた事情」などが必要なので、長期間別居していた場合にはあてはまらない可能性が高いと考えられます。
  • その他婚姻関係を継続しがたい重大な事由...相手からDVやモラハラ被害を受けていた場合、長期間別居していた場合などです。

長期間の別居が離婚原因になる

別居時には法律上の離婚原因がなくても、長期間別居していると離婚原因として認められる可能性があります。一般的にはおおむね5年程度別居していたら、離婚原因として認めてもらえるケースが多くみられます。
不倫した有責配偶者からの離婚請求の場合には、10年程度別居状態が継続していて未成年も子どもがいない場合に離婚が認められやすくなる傾向があります。

弁護士に交渉を依頼する

自分たちだけで話し合っても離婚できない場合、弁護士に代理交渉を依頼するのも1つの方法です。弁護士が間に入ると相手にもこちらの真剣味が伝わり、離婚の話し合いが前向きに進みやすくなるためです。

弁護士であれば離婚条件もきちんと定めて公正証書の作成のサポートもできますので、これから離婚を進めようとしている方はお気軽にご相談ください。

長期間別居後に離婚する場合の注意点

長期間別居後に離婚する場合、財産分与や慰謝料請求の際に注意しなければならないポイントがあります。

財産分与や慰謝料の資料を集めにくい

財産分与や慰謝料請求するには、預貯金通帳や取引履歴、保険の解約返戻金証明書や不動産関係書類などの資料、不倫の証拠が必要です。
しかし別居状態が継続すると、過去の財産記録や不倫の証拠を集めるのが難しくなってしまいます。自分で資料や証拠を集めるのが難しければ、早めに弁護士へ相談すべきです。

時効

慰謝料請求権には時効があります。
不倫相手に対する請求権は、不倫と不倫相手を知ってから3年で消滅します。
長期間別居中に3年が経過してしまったら、不倫相手に慰謝料請求できなくなっている可能性があります。

別居後の不倫は慰謝料請求できない

別居するとその時点で婚姻関係が破綻するので、別居後に異性と交際しても不法行為になりません。
相手が別居後に不倫しても慰謝料請求できませんし、こちらに別居後の交際相手がいても慰謝料を払う必要はありません。

長期間別居後の離婚を弁護士に依頼するメリット

長期間別居状態が続くと、介護や相続などの問題も現実化してきます。
財産分与や慰謝料などの証拠も集めにくくなるので、早めにスッキリさせておくのがよいでしょう。ご自身たちで話し合って解決できない場合でも、弁護士が介入すると離婚できるケースがほとんどです。茨城で別居中の相手と離婚したい方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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