性格の不一致で離婚したい方へ

性格の不一致は統計上よく見られる離婚理由ですが、裁判で離婚が認められるかどうかは、個別事情の積み上げで判断されます。

本記事では、協議・調停・訴訟の各段階で何を整えるべきかを実務の流れに沿って整理します。具体的には、別居の開始時期や生活の経済的分離を示す資料、子の監護状況の立証、連絡方法の記録化など、証拠化の手順を示します。

あわせて、財産分与・年金分割・養育費の見方に加え、慰謝料が生じにくい類型で用いられる「解決金(和解金)」の位置づけと金額調整の考え方も説明します。どの段階で何を準備し、どの条件を数値化して交渉や合意文言に落とし込むかの全体像を把握できます。初動での判断が後の見通しに影響するため、準備段階からの相談も選択肢となります。

1.性格の不一致とは

性格の不一致とは、配偶者との性格や生活習慣、価値観が異なることです。

多少の違いであれば耐えられますが、著しく価値観が異なると我慢ができなくなり、婚姻関係を続けられなくなるご夫婦も少なくありません。

性格の不一致が離婚問題に発展しやすいのは、以下のような場合です。

  • 相手と考え方や物事の捉え方が大きく異なり喧嘩やすれ違いが増える
  • 金銭感覚が合わない
  • 相手の生活習慣に嫌悪を感じる
  • 子どもの教育方針が異なる
  • 相手が神経質すぎる、わがまますぎるなどの事情があり耐えられない

性格がどうしても合わないと、結婚後、徐々に違和感が大きくなって離婚を考えてしまうものです。

2.性格の不一致はもっとも多い離婚原因

「性格の不一致」は、家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係事件の『申立ての動機』として高い割合を占めます。

統計の“指標”と“年次”を明示し、どの母集団(協議離婚の申告理由等)を基準にした数字かを区別して解説します。数値は最新公表年に合わせて更新し、男女別・申立別の違いを混同しないよう整理します。

また、裁判上の離婚原因(民法770条)における「婚姻を継続し難い重大な事由」とは評価枠組みが異なるため、以下では「よくある統計的傾向」と「裁判実務での判断要素」を切り分けて示します。

日本では性格の不一致がもっとも多い離婚原因です。裁判所の司法統計によって調停申立の動機が発表されていますが、性格の不一致は男女ともに毎年「1位」となっています。

あなたが夫や妻と性格が合わないので離婚したいと考えているとしても、決して珍しいことではありません。

最新統計

最新の司法統計(令和5年・2023年)では、家庭裁判所の婚姻関係事件における申立ての動機の1位が、男女とも『性格が合わない(性格の不一致)』です。引用・参照は裁判所『司法統計年報 家事編(令和5年)』。

すなわち、裁判所関与の手続に進む段階でも、最も多く挙げられている理由が「性格の不一致」といえます。一方、全国の離婚件数や離婚率の推移は人口動態統計で把握します。直近の公表値でも、総件数は緩やかな増減を繰り返しており、年により上下があります。

※数値(%や件数)を図表で示す場合は、母集団の違いに注意します。

  • 「家庭裁判所の申立理由」=司法統計(裁判所関与の手続の申立時に記録される理由)。
  • 「全国の離婚件数・率」=人口動態統計(協議離婚を含む全件の年次集計)。

3.性格の不一致で離婚できるケース

性格の不一致は抽象的な事情にとどまるため、裁判で離婚を認める直接の根拠にはなりにくいです。

民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」の枠組みを前提に、別居の有無・期間、生活の経済的分離、離婚意思の継続、未成年子の監護状況、有責性(暴言・モラルハラスメント等)といった具体事情をどう積み上げるかを解説します。

協議・調停・訴訟の各段階で、どの資料を準備し、どの順序で主張を整理するかを示し、関係再構築を検討する場合の選択肢にも触れます。読者は、抽象的な「不一致」を実務上の評価要素へ翻訳し、次のアクションに接続できます。

夫婦の性格が合わない場合、離婚できるケースとできないケースがあります。
どういった状況であれば離婚できるのか、みてみましょう。

相手と合意した

1つは配偶者と合意ができた場合です。

日本では、夫婦双方が離婚に同意すれば協議離婚ができます。協議離婚では離婚原因がなんであってもかまいません。夫婦双方が離婚届に署名押印して役所へ提出すると、それだけで離婚が成立します。

協議ができない場合には離婚調停を申し立てる必要がありますが、性格の不一致で調停離婚もできます。調停も夫婦の合意によって成立するので、離婚原因は問われません。

法律上の離婚原因がある

協議や調停では離婚できない場合、離婚訴訟を申し立てなければなりません。
訴訟では、性格の不一致が理由で離婚できない可能性があります。
離婚訴訟の判決で離婚を認めてもらうには「法律上の離婚原因」が必要だからです。

法改正・運用の注記

離婚原因や付随事項に関する法令・実務は、見直しや解釈の更新が継続的に行われています。

民法770条(裁判上の離婚原因)の解釈運用、家事事件手続に関する各種通達・運用通知、養育費と婚姻費用の標準算定方式やガイドライン、年金分割・税務取扱い等は、改訂・更新があり得ます。

各記載は執筆時点の一般的整理であり、実務適用に際しては最新の条文・通達・統計および裁判例の確認が不可欠です。

個別事案では、別居の開始経緯、生活の経済的分離、監護状況、収入・資産の構成などにより法的評価が変わります。実務対応は、最新資料の収集と、協議・調停・訴訟における主張立証の整合を前提に検討してください。

関係再構築を検討する場合の選択肢

離婚以外の選択肢を把握した上で意思決定すると、後の紛争を抑制できます。
再構築のための手段として、次の選択肢があります。

  1. 第三者による夫婦カウンセリングの利用
  2. 別居を伴う冷却期間の設定
  3. 家計の見直しと負担分担の明確化
  4. 家事・育児の役割分担の再設計
  5. 連絡手段と頻度の取り決め
  6. 親族・友人を交えない直接対話のルール化

です。
カウンセリングは、感情的対立の解消と課題の可視化に有効です。テーマ設定(家計、育児、生活習慣、価値観の衝突)を事前に共有し、回数と期間を合意します。冷却期間を設ける場合は、期間、費用負担、連絡方法、面会交流(子がいる場合)の運用を文書で取り決めます。

再構築を試みても改善がみられない場合に備え、記録化を継続しつつ、合意形成に資する条件案(財産分与、養育費、面会交流、解決金の要否)を並行して検討します。安全確保が必要な兆候(暴力、脅迫、過度な監視)がある場合は、直ちに安全確保と法的対応を優先します。

実務動向の注記(裁判例の傾向と評価要素)

裁判離婚の可否は、民法770条1項5号が定める「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を、個別事情の総合評価で判断します。固定的な年数基準や単一要素による機械的判断は採られません。

裁判例では、別居の長短だけではなく、

  1. 別居に至った経緯
  2. 離婚意思の継続性
  3. 経済生活の分離(家計・住居・社会的実体の分離度合い)
  4. 未成年子の有無と監護状況
  5. 婚姻期間・当事者の年齢
  6. 再同居の見込みの有無
  7. 有責性(暴言・モラルハラスメント等の存否)

などを重視する傾向があります。

長期別居は破綻判断の有力な事情ですが、未成年子の監護の安定や再同居の具体的可能性がある場合は破綻を否定する判断も見られます。逆に、別居期間が比較的短くても、生活実体の分離が明確で、関係修復の見込みが乏しい場合には破綻を肯定し得ます。

実務対応として、別居開始時期・経緯のメモ、住民票や賃貸契約書、光熱費・通信費明細、家計口座の出入金、子の学校・医療・面会交流の記録など、客観資料を体系的に収集・保存してください。適法な取得方法とプライバシー配慮を徹底します。

法制度や運用は改訂・更新があり得ます。最新の条文・通達・統計の確認と、事案固有の見通しの検討を前提に、協議・調停・訴訟の各段階で主張と資料を整合的に構成します。

法律上の離婚原因5つ

  • 相手の不貞(不倫)
  • 相手による悪意の遺棄(生活費不払いや家出、同居拒否など)
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病
  • その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

上記のとおり、性格の不一致そのものは法律上の離婚原因になっていないので、単に「性格が合わない」と主張するだけでは訴訟で離婚を認めてもらえません。

性格の不一致で離婚できないケース

性格の不一致で離婚できないのは、以下のような場合です。

相手が離婚に同意せず法律上の離婚原因もない

相手が離婚を受け入れない場合、訴訟で離婚を認めてもらうしかありません。
しかし法律上の離婚原因がなかったら訴訟では離婚できません。

相手が離婚に合意せず訴訟で法律上の離婚原因を証明できない

訴訟で離婚を認めてもらうには、法律上の離婚原因を証明しなければなりません。
不倫やDVなどの離婚原因となる事実があっても証明できなければ、離婚が認められない可能性があります。

4.性格の不一致が「法律上の離婚原因」になるケースとは

裁判上の離婚は、民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を個別事情の総合評価で判断します。

性格の不一致は抽象概念にとどまり、それ自体では足りませんが、別居の有無・期間、生活の経済的分離、離婚意思の継続、未成年子の監護状況、有責性(暴言・モラルハラスメント等)などの事情が重なると、法律上の離婚原因に該当し得ます。以下では、認められやすい・認められにくい事情と、それぞれで準備すべき資料を整理します。

相手が不貞した

夫婦の性格が合わないと、別の異性と不倫関係となってしまう人が少なくありません。
不倫(配偶者以外の異性との肉体関係)は法律上の離婚原因となるので、相手が不倫したら訴訟で離婚が認められます。

相手が生活費を払ってくれない

夫婦には互いに生活を支え合うべき義務があるので、収入の高い側は低い側へ生活費を渡さねばなりません。
それにもかかわらず生活費を払わなかったら「悪意の遺棄」と評価され、法律上の離婚原因になります。

相手が家出した

夫婦には同居義務があるので、正当な理由なしに家出したり同居を拒否したりしてはなりません。それにもかかわらず相手が一方的に家出をしたら、法律上の離婚原因が認められる可能性があります。

DVやモラハラ被害を受けている

DVやモラハラ(精神的暴力)は人格権侵害として許されない行為であり、高い違法性が認められます。
相手からDVやモラハラの被害を受けているなら、「その他婚姻関係を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められます。

長期間別居している

夫婦の別居は、裁判で婚姻関係の破綻(継続し難い重大な事由)を判断する際の主要な事情です。

別居期間は重要事情ですが、経緯・生活の分離・再同居見込み・監護状況等との総合評価が基本です。機械的な年数基準は採られません。

裁判例では3年程度でも破綻が肯定された事案がある一方、子の年齢や監護状況、別居の態様によっては5年以上でも否定されることがあります。期間はあくまで目安であり、事情の積み上げが重要です。

実務対応として、別居開始時期と独立生計を示す資料(住民票の異動、賃貸契約書、転居・転出入の記録、光熱費・通信費の明細、婚姻費用の授受記録、家計口座の動き、子の学校・医療関係連絡先の管理状況)を整理してください。

未成年子がいる場合は、監護実績と面会交流の見通しが重視されます。拙速な別居は不利に働くおそれがあるため、事前に婚姻費用の請求や生活設計を含めた準備を行うことを勧めます。証拠収集の適法性と保存の実務

裁判所は個別事情を総合評価しますが、証拠の取得方法が不適切だと、証拠価値が下がるほか、別の法的リスクが生じ得ます。適法な収集と改ざん防止の保存を徹底します。

適法収集の基本

当事者間の会話の録音は、録音者が会話の当事者であれば適法と解されます。相手の同意なくLINE・メール・家計の入出金など、自分が正当にアクセスできる情報の保存は原則可能です。自宅の公共空間(リビング等)における物の状態や掲示物の写真撮影も通常は問題ありません。

違法収集となり得る例

相手のスマートフォンやPCに無断でログインする行為、パスワードの推測・解析、鍵付きスペースの開披、隠しカメラの設置、GPS端末の無断装着や位置情報の追跡は、不正アクセス禁止法やプライバシー侵害、ストーカー規制法等の問題を生じ得ます。違法収集は、民事訴訟で証拠価値が減殺されるほか、別途不法行為責任の追及を受けるおそれがあります。

保存と真正性の確保

電子的記録は原本保存を基本とし、エクスポート(PDF化、スクリーンショット)時は取得日・出典・URL等を併記します。画像や音声は撮影・録音の原ファイルを保持し、バックアップを二系統に分けます。提出用には、時系列表と証拠の通し番号・索引を付して突合できるよう整理します。

家計・生活実態の立証

住民票の異動、賃貸借契約書、公共料金・通信費の明細、家計口座の出入金、給与明細や源泉徴収票、子の学校・医療連絡記録、面会交流の実施ログなどを網羅的に収集します。第三者作成書面(学校・医療機関・自治体の通知等)は客観性が高く、有用です。

運用上の留意点

取得の可否に迷う場合は、実行前に弁護士へ確認してください。違法収集のおそれがある方法は避け、適法な代替手段(相手方への文書送付要請、調停・訴訟での文書提出命令の活用等)を検討します。

認められやすい事情/認められにくい事情

評価要素を明確にし、それぞれに対応する必要資料を整理します。

認められやすい事情の例

  • 長期の別居と生活実体の分離が明確である
  • 離婚意思の継続と同居再開見込みの欠如
  • 夫婦関係が社会的に解消されている
  • 有責性の存在(暴言・モラルハラスメント等)と因果
  • 子の監護の安定性が確保されている

認められにくい事情の例

  • 別居期間が短く、家計や住居が実質的に混在
  • 一時的な口論・性格差の主張のみで、継続性・具体性がない
  • 子の監護が不安定、または監護切替の必要性に説得力がない
  • 関係修復の試みが未了で、直近に同居再開の合意・可能性がある
  • 違法・不適切な証拠収集に依拠

5.性格の不一致で離婚する場合に慰謝料請求できる?

性格の不一致は、違法行為を前提とする慰謝料の要件を満たしにくい一方、協議・調停・訴訟上の和解では条件全体の調整として金銭給付(解決金)が取り決められることがあります。

慰謝料と解決金の違い(定義と位置づけ)

慰謝料は、不貞行為や暴力等の違法行為に対する損害賠償です。法的根拠は不法行為責任であり、違法性・因果関係・損害の立証が前提となります。性格の不一致は抽象的事情にとどまるため、慰謝料が直ちに認められる類型ではありません。

解決金(和解金)は、紛争の一括終結を目的とする包括的な調整金です。賠償ではなく、財産分与・養育費・面会交流など他条件とのバランスを踏まえた合意上の金銭給付として位置づけます。金額は、婚姻期間、別居期間、収入・資産、監護実績、早期解決の必要性等を総合して決まります。

文言整備の要点は、

  1. 名目の明確化(慰謝料か解決金か)
  2. 支払方法(一括/分割)と期日
  3. 分割時の期限の利益喪失
  4. 遅延損害金
  5. 担保(保証・担保設定の要否)
  6. 清算条項(名目を問わず相互に債権債務なし)
  7. 守秘条項
  8. 公正証書化の要否

税務は、社会通念上相当な範囲の慰謝料・財産分与は課税対象外と整理されるのが通例ですが、名目・額・資産移転の内容により取扱いが変わり得ます。合意前に個別確認を行います。

性格の不一致で離婚する場合、慰謝料を請求できるケースとできないケースがあるのでそれぞれみてみましょう。

慰謝料請求できないケース

合意で離婚する(協議離婚、調停離婚)

夫婦で話し合って離婚する場合には、基本的に慰謝料請求できません。

慰謝料が発生するには「どちらか一方の有責性」が必要だからです。有責性とは、婚姻関係を破綻させたことに対する責任です。

単に性格が合わずに離婚する場合、夫婦のどちらが悪いわけではありません。

お互いに慰謝料を払わねばならない理由がないので、慰謝料は請求できません。

ただし合意で別れる場合でも、相手が不倫していたり暴力を振るわれたりした経緯があれば、慰謝料請求できる可能性があります。

長期間の別居を理由に離婚する

離婚訴訟で裁判離婚する場合でも、離婚理由が「長期間の別居」の場合には基本的に慰謝料請求できません。

別居して婚姻関係が破綻した場合、夫婦のどちらにも有責性が認められないためです。

ただしもともとの別居原因がどちらかの不倫やDVなどの場合、慰謝料請求できる可能性があります。

慰謝料請求できるケース

性格の不一致が理由でも慰謝料請求できるのは、以下のような場合です。

  • 相手が不倫した
  • 相手から暴力を振るわれた、モラハラ被害を受けた
  • 相手が生活費を払ってくれなかった、家出された

上記のような場合、相手には有責性が認められるので、協議離婚でも調停離婚でも裁判離婚でも慰謝料を請求できると考えましょう。

解決金(和解金)の考え方と相場の目安

性格の不一致は、違法行為に対する損害賠償(慰謝料)とは性質が異なるため、協議・調停・訴訟上の和解では、紛争の一括解決を目的とする「解決金(和解金)」を取り決めることがあります。

解決金は賠償金ではなく、離婚条件全体の調整として位置づけます。金額は、婚姻期間と別居期間、双方の収入・資産・負債、未成年子の有無と監護実績、財産分与や養育費等の他条件とのバランス、早期解決の必要性などを総合して決まります。

相場は事案により幅がありますが、違法行為がない標準的な事案では数十万円〜数百万円の範囲で調整される例が見受けられます。高収入世帯や共有財産が多い事案では上振れし得ます。

6.性格の不一致で離婚する場合の財産分与と年金分割

財産分与は、婚姻期間中に形成・維持された財産と負債の清算です。対象の特定、評価基準時の確定、按分方法、清算方法を順に示します。対象資産(預貯金・証券・不動産・保険解約返戻金・退職金相当分・動産等)と関連負債を把握し、原則2分の1を起点に事情に応じて調整します。合意文言には対象一覧、評価基準時、清算額、支払期日、履行確保条項を明記します。

財産分与の基本

財産分与の目的と算定枠組みを最初に明示すると、個別論点(評価基準時・対象資産・負債整理)の理解が安定します。
財産分与は、婚姻期間中に形成・維持された共有財産の清算を中心に、事案により扶養・慰謝の要素を含み得ます。本記事では、原則として清算としての分与に焦点を当てます。分与額は、

  1. 対象財産と負債の特定
  2. 評価基準時の確定
  3. 形成・維持への寄与(家事・育児・就労を含む)の評価
  4. 清算方法(現金・代物弁済)

の設計という段階で整理します。

按分は、専業・共働きにかかわらず、夫婦の協力共同に基づく価値形成を前提とします。典型的には2分法が起点ですが、特有財産の混在、短期婚姻、極端な負債構成、事業資産の存在など、衡平性に配慮した調整が必要な場合があります。

預貯金・証券・不動産・保険解約返戻金・退職金見込等の「見える資産」に加え、未払賞与・持株会・仮想通貨・ストックオプション等の把握漏れを防ぐことが重要です。負債は、住宅ローン、カード債務、奨学金、事業性借入のうち婚姻生活との関連部分を控除し、連帯債務や保証の扱いは履行可能性を踏まえて調整します。

合意文言では、対象資産・負債のリスト、評価基準時、清算額、支払期日、履行確保(期限の利益喪失・遅延損害金・担保)を明記します。税務・登記・名義変更の手続時期もスケジュール化し、提出書面には目次・索引・通し番号を付して真正性と突合性を確保します。

財産分与は、離婚理由のいかんにかかわらず実施できます。対象は、婚姻期間中に形成・維持された財産と、それに対応する負債です。典型例として、預貯金、証券、不動産、車両、保険の解約返戻金、退職金のうち婚姻期間相当分、価値のある動産(美術品等)が挙げられます。

按分は原則として各2分の1が起点ですが、当事者の合意で調整できます。ただし、形成・維持への寄与、負債の帰属、清算方法の実行可能性、税務・名義変更の手続負担を踏まえ、衡平を損なわない範囲で設計します。

厚生年金等に加入歴がある場合は、年金分割の検討が必要です。標準報酬に基づく「合意分割」と、第3号被保険者期間に関する「3号分割」があり、離婚後の請求期限は原則2年です。収入格差が大きい場合は、将来の生活設計に影響するため、分割割合や必要資料を早期に確認します。

評価基準時と対象資産の範囲

財産分与は「清算」と「扶養」「慰謝」の要素を含みますが、本節では清算としての分与に焦点を当て、評価基準時(財産額を確定する時点)と対象範囲を明確化します。

評価基準時は、原則として別居時点または実質的な家計分離時点を起点に検討します。例外として、長期の別居後に新たな資産形成があった場合など、衡平に反する結果を避ける必要があるときは、実務で調整が行われます。評価資料は、預貯金通帳の残高証明、証券会社の取引報告書、不動産の固定資産税評価・路線価・査定書、保険の解約返戻金見込、退職金見込額の算定根拠、暗号資産の残高証明等を揃えます。

対象資産は、婚姻期間中に形成・維持された共有財産が中心です。名義のいかんを問わず、夫婦の協力によって得られた価値は原則として按分対象となります。典型例は、預貯金、金融商品、不動産、車両、保険の解約返戻金、退職金のうち婚姻期間相当分です。負債も対象であり、住宅ローン、カード債務、事業性借入のうち婚姻生活の維持・形成に関連する部分は控除します。

除外されやすいものは、婚姻前から保有する特有財産、親族からの特定目的の贈与・相続財産(ただし家計投入部分は検討余地あり)です。評価に幅が出やすい項目は、評価基準日の特定と根拠資料の整合を重視します。合意文言では、評価基準時、対象財産のリスト、負債の帰属、清算方法(現金・代物弁済)、支払期日、履行確保の条項を明記します。

年金分割の基本(類型・手続・期限)

将来の生活設計に直結し、収入格差がある夫婦では重要度が高い論点です。

年金分割には、標準報酬(厚生年金の報酬比例部分)を当事者の合意で按分する「合意分割」と、第3号被保険者期間(配偶者の被扶養期間)に対応して自動的に按分できる「3号分割」があります。合意分割は按分割合の上限が定められており、分割割合は個別事情に応じて調整します。3号分割は当該期間に限って按分され、按分割合は原則2分の1です。

手続の流れは、

  1. 年金記録の情報通知書の取得
  2. 按分割合の協議(または審判・調停)
  3. 日本年金機構への請求

の順です。必要書類は、戸籍関係書類、情報通知書、合意書または審判書・調停調書の写し等です。

重要な期限として、離婚後の年金分割請求期限は原則2年(合意分割・3号分割とも)です。本改正(2024年法)による年金分割の期限延長は予定されていません(延長対象は財産分与請求)。期限徒過は不利益が大きいため、財産分与や解決金の設計と並行して、早期に必要資料を収集してください。

留意点は、

  1. 企業年金や確定拠出年金など公的年金以外は年金分割の対象外であること
  2. 厚生年金の報酬比例部分のみが対象で基礎年金は対象外であること
  3. 将来の受給額に影響するため、他の条件(養育費・解決金・財産分与)との全体最適で検討すること

合意文言には、按分割合、対象期間、請求手続の分担、必要書類の手配と期限、協力義務を明記します。

よくある落とし穴(財産分与・年金分割)

見落としがちな論点を事前に回避すると、後日の紛争と手戻りを抑制できます。

  • 評価基準時の混同:別居時点と合意書作成時点の残高を混在させないよう、評価日を明示し、資料は同一時点でそろえます。
  • 特有財産の線引き不足:婚姻前資産や相続財産でも、家計投入部分は按分検討の余地があります。入出金履歴で線引きを可視化します。
  • 退職金・持株会・仮想通貨の漏れ:将来受給見込やデジタル資産は把握漏れが起きやすい項目です。残高証明・評価方法・換価手順を明記します。
  • 負債の帰属不明:住宅ローンやカード債務は、婚姻生活との関連部分を特定し、誰がどの債務を引き受けるかを条項化します。連帯保証の解除や借換の要否も確認します。
  • 代物弁済の税務失念:不動産・車両の現物移転は税務・名義変更が伴います。費用負担と手続期限を合意文言に入れます。
  • 年金分割の期限徒過:離婚後の年金分割請求は原則2年です。情報通知書の取得、按分割合の協議、公的機関への請求まで逆算します。
  • 企業年金・確定拠出年金の誤解:公的年金以外は年金分割の対象外です。財産分与の枠で取り扱うかを検討します。
  • 清算条項の不備:合意後に別名目で請求が続く事態を避けるため、「名目の如何を問わず相互に債権債務なし」を明確化します。
  • 履行確保の欠落:分割払の期限の利益喪失、遅延損害金、公正証書化、担保・保証人の有無を必ず設計します。
  • 実行可能性の軽視:支払計画の現実性が低い合意は履行不全の原因になります。収支計画と連動させ、代替案(資産売却・代物弁済・期限延長)も検討します。

7.性格の不一致で離婚する場合の親権や養育費

未成年の子どものいるご夫婦が離婚する場合、子どもの親権者を決めなければなりません。
離婚には合意できても親権者について合意できなければ協議離婚や調停離婚できないので注意が必要です。

どちらが親権者になるべきかは夫婦で話し合って決めるべきですが、どうしても合意できない場合には裁判所に決めてもらうほかありません。
裁判所では、以下のような視点で親権者を判断します。

  • これまでの養育実績
  • 現在の子どもとの関係
  • 子どもの愛着度合い
  • 今後の教育方針
  • 子どもが乳幼児なら母親優先
  • 子どもが一定以上の年齢になっていれば子どもの希望を優先
  • 離婚時に夫婦が別居している場合、子どもが落ち着いて生活していれば現状を優先
  • 離婚後の面会交流に積極的
  • 居住環境が良い
  • 経済力がある
  • 心身共に健康

自分たちで話し合う場合でも、上記のような観点から「どちらが子どもの親権者になるのがより子どものためになるか」を考えて親権者を決めましょう。

親権を決定する際には、同時に養育費と面会交流についての約束もしておくようおすすめします。民法にも、離婚時にこれらの事項を決めるべきと規定されていますし、取り決めておかないと離婚後に調停が起こってトラブルの蒸し返しになる可能性もあるからです。

7-1.監護者の判断要素

監護者は、子の生活の連続性と養育環境の安定性を基準に判断します。

判断要素は、

  1. 監護実績(起床・食事・通学・医療・行事対応の主担当)
  2. 生活の継続性(居住・学校・友人関係)
  3. 養育環境(住居の安全性、同居親族の協力体制、勤務形態と保育手当ての可用性)
  4. 親の心身状態と養育意欲
  5. きょうだい不分離の原則
  6. 別居に至る経緯と今後の協力姿勢

実務では、保育園連絡帳・学校配布物・医療受診記録・行事の参加記録・家事分担の実績を、時系列と客観資料で示します。別居の初動で転校・転園が必要な場合は、必要性と代替案を具体的に説明します。

7-2.面会交流の基本モデル

面会交流は子の最善の利益を中心に、実現可能性の高い計画から開始します。

モデル例は、未就学児は月1~2回・各2~3時間、小学生は月1~2回・半日~1日、中高生は部活動等を踏まえ月1回程度・半日から柔軟設定とします。長期休暇時は宿泊や連続日程を検討し、オンライン交流(ビデオ通話・メッセージ)の頻度と時間帯も定めます。

合意文言には、受渡場所・時間帯、遅延時の連絡方法、天候や体調不良時の振替、学校行事との調整、第三者関与(面会交流支援機関)の利用可否を明記します。記録化しやすい連絡手段を用い、トラブル時の再協議期限を設定します。

7-3.養育費の算定と特別費の取り扱い

養育費は子の生活保持水準を基準に、客観的算定と運用可能な合意文言を整合させる必要があります。

算定手順は、

  1. 当事者双方の総収入(給与・事業・賞与)と社会保険料・税額を把握し
  2. 標準算定方式に基づく月額目安を特定し
  3. 子の年齢区分・人数で補正し
  4. 通学・通院・住居等の事情を踏まえて最終案に落とす

賞与は年額に換算し、臨時的な手当は恒常性の有無で取扱いを分けます。

特別費(通常の監護費用に含みにくい高額・臨時費)は、

  1. 学校関係(私学学費、受験料、塾・習い事)
  2. 医療関係(入院・手術、矯正歯科、長期投薬)
  3. 交通・宿泊(遠距離面会や転居伴う通学費増)
  4. その他(端末購入・修学旅行等)

に類型化し、負担割合(例:各2分の1、収入按分)と発生日の確認方法(領収書・請求書等の提示)を合意文言で定めます。

合意条項の要点は、

  1. 支払始期(請求月以降)
  2. 支払方法(口座振替・振込、毎月◯日)
  3. 遅延時の取扱い(期限の利益喪失・遅延損害金)
  4. 年齢区分変更時の自動見直し
  5. 進学・転居等の事情変更時の協議条項
  6. 特別費の事前承認・事後精算

の手順です。

調整事項として、婚姻費用から養育費への切替時期、児童手当・扶養控除・学費口座の名義、学資保険の解約返戻金の扱い、面会交流に伴う交通費分担を整理します。履行確保の観点から、公正証書化や履行勧告・間接強制等の手段も検討し、将来の紛争予防に資する記載を心掛けます。

8.性格の不一致で離婚する流れ

協議→調停→訴訟の順に、準備物・手順・合意文言の要点を示します。別居初動と婚姻費用を起点に、条件設計、主張整理・資料提出、主張立証・和解選択肢へ進みます。

別居初動と婚姻費用

別居開始時の手順と婚姻費用(別居中の生活費)の整理は、その後の交渉・調停の前提となります。

別居前に、住居の確保、収入と固定費の把握、子の学校・保育・医療の連絡体制を準備します。別居開始時期、家計分離の開始(口座・公共料金の名義や支払方法の変更)、連絡手段は書証化できる形で残します。DV等の兆候がある場合は、避難・保護の優先とともに、庁舎・NPO等の支援窓口(相談・保護命令の申立て等)を先行させます。

婚姻費用は、収入に応じた生活保持義務に基づき、家庭裁判所の算定表を起点に月額を見積もります。準備資料は、源泉徴収票・確定申告書・給与明細、社会保険料・住民税額、住宅ローン等の固定費、子の年齢と人数です。合意書には、支払開始時期(原則請求月以降)、支払方法(振込・口座振替)、支払期日、遅延時の取扱い(期限の利益喪失・遅延損害金)を明記します。

別居後の連絡や受渡は記録化しやすい手段を用い、感情的対立を避けます。婚姻費用の合意は、養育費・財産分与・解決金との整合を意識して設計します。

  1. 相手に離婚を持ちかける
  2. 交渉して合意する
  3. 協議離婚合意書を作成する(できる限り公正証書化する)
  4. 合意できなければ離婚調停を申し立てる
  5. 調停が不成立になったら離婚訴訟を申し立てる(ただし法律上の離婚原因がある場合に限る)

基本的に上記の流れで進めますが、訴訟提起すべきかどうかはケースバイケースです。

また協議離婚する場合でも、必要な離婚条件を定めて公正証書化しておくべきだと考えます。

協議前の準備チェックリスト

  • 別居開始時期・経緯を時系列でメモ化します。
  • 住民票異動・賃貸契約・光熱費や通信費明細など独立生計を示す資料を整理します。
  • 源泉徴収票・確定申告書・給与明細など収入資料を揃えます。
  • 預貯金・証券・不動産評価・ローン残高・保険解約返戻金見込など資産負債一覧を作成します。
  • 監護実績、学校・保育・医療の連絡先、行事予定など子に関する情報を整理します。
  • 財産分与・年金分割・養育費・面会交流・解決金の要否と金額帯・引越し時期・氏の扱い等の条件素案を作成します。
  • 清算条項・守秘条項・履行方法・支払期日・分割条件・遅延損害金・期限の利益喪失・担保・公正証書化の方針を含む合意書雛形を準備します。
  • 譲歩可能幅と優先順位を明確化します。
  • 連絡手段は記録化しやすいテキストを基本とします。

調停に臨むためのチェックリスト

  • 申立書で争点(破綻経緯・別居態様・監護状況・家計収支)を簡潔に整理します。
  • 提出資料は索引・通し番号・目次を作成し、提出日を管理します。
  • 養育費は算定表基準、面会交流は頻度・時間帯・受渡場所を具体化します。
  • 財産分与は評価基準時点を明示します。
  • 解決金は他条件との一体調整として金額帯と支払方法案を併記します。
  • 清算条項・守秘条項・履行確保条項など合意文言案を用意します。
  • 学校・医療・口座・公共料金の名義変更など連絡・引継ぎ計画を事前に整理します。
  • 期日では相手方の実現可能性を確認し、代替案(代替面会・担保付き分割)を提示します。
  • 期日間の宿題は期限と担当を明確化します。

訴訟段階の留意点と証拠リスト

  • 結婚から現在までの時系列表を作成し、各事実に対応する証拠を突合します。
  • 通信記録・位置情報・録音等の取得方法を確認し、適法性とプライバシー配慮を徹底します。
  • 別居の必要性・監護安定性・面会実施状況に関する反証を想定します。
  • 財産分与・年金分割・養育費・婚姻費用との整合を図り、損益調整を明示します。
  • 和解の選択肢として解決金のレンジ、履行確保、税務影響の有無を提示します。
  • 主張は離婚意思の継続、同居再開見込みの欠如、社会的実体の分離など破綻判断要素を中心に構成します。
  • 監護状況の安定性と面会交流の実施可能性を客観資料で裏付けます。

和解・調停成立後のチェックリスト

成立後の手続漏れが履行遅延・紛争再燃を招くため、終了時点で確認すべき項目を整理します。

金銭給付関係

  • 支払期日と金額(調停調書・公正証書の記載と突合)
  • 支払方法(振込先・名義・手数料負担)
  • 分割の場合:期日管理表の作成、遅延時の通知文テンプレート
  • 履行確保措置:公正証書正本の取得、執行文付与手続の要否

財産分与・名義変更

  • 不動産:所有権移転登記の完了確認(登記識別情報・固定資産税通知書)
  • 預貯金・証券:解約・名義変更の完了記録、残高証明の取得
  • 保険・退職金:名義・受取人・返戻金請求の時期管理
  • 動産:引渡・受領記録(写真・日付・署名入り受領書)

年金分割

  • 年金分割情報通知書の受領
  • 按分割合の協議書または調停調書の写し
  • 日本年金機構への請求書提出(期限:離婚後2年以内)
  • 記録更新の完了確認

養育費・面会交流

  • 養育費振込の開始日・期日管理表の作成
  • 面会交流スケジュール表・年間カレンダー作成
  • 行事予定・学校連絡・医療情報の共有ルール確認
  • 面会実施記録フォーマットの整備(日時・内容・特記事項)

税務・社会保険・行政手続

  • 扶養控除・医療費控除・児童手当・保険証・年末調整の届出変更
  • 住民票・戸籍・マイナンバー関連の変更完了確認
  • 住民税・国保・年金保険料の区分変更の申告

再発防止と見直し

  • 連絡・支払・面会の実施状況を6か月単位でレビュー
  • 事情変更(転居・進学・再婚等)時の再協議フローを明文化
  • 合意書・調停調書のPDF控えとバックアップを2か所に保管


自己判断で行動すると不利益を受ける可能性もあるので、迷ったときにはすぐに弁護士へ相談しましょう。

DUONは離婚に悩む方へのご支援に力を入れている茨城の法律事務所です。性格の不一致で離婚を検討している方は、一度お気軽にお問い合わせください。

9.よくある質問(性格の不一致)

性格の不一致だけで裁判離婚は可能ですか

裁判離婚の可否は「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の有無で判断されます。性格の不一致は抽象概念にとどまるため、単独では足りないことが多いといえます。別居の有無・期間、独立生計の状況、離婚意思の一貫性、暴言やモラルハラスメントの有無、未成年子の監護状況などの具体事情を積み上げて立証します。実務では、別居や生活分離の度合いが重要な評価要素となります。

別居は何年あれば足りますか

機械的な年数基準はありません。別居に至った経緯、再同居の見込み、家計の分離状況、監護状況、婚姻期間や年齢等を総合評価します。3年程度で破綻が認められる事案もあれば、事情次第でさらに長期を要する場合もあります。別居開始時の経緯とその後の生活実態を、客観資料で継続的に記録することが重要です。

別居前にやっておくことは何ですか

無計画な別居は不利益を招き得ます。住居確保、収入の確保、婚姻費用(別居中の生活費)請求の準備、子の保育・学校・医療の引継ぎ、郵便物や連絡先の整理、家計口座の把握、必要最低限の家財の持出計画を整えます。別居開始日、家計分離の開始、連絡方法は書証化できる形で残します。安全確保が最優先であり、DV等が疑われる場合は避難手順と支援窓口を先に確認します。

婚姻費用はどう扱われますか

別居中は原則として収入に応じて生活保持義務が生じます。家庭裁判所の算定表を基準に、収入資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細)で具体額を見積もります。実務では、請求時期と支払始期、滞納時の対応(仮差押えや履行勧告等)を想定しておきます。婚姻費用の合意は、養育費や解決金、財産分与との整合も意識して設計します。

面会交流はどの程度が目安ですか

子の最善の利益が基準です。監護状況、子の年齢・発達、通学や生活リズム、居住地の距離を踏まえて、月1~2回・数時間から開始し、段階的拡大を検討します。受渡場所、時間帯、延長・振替手続を具体化し、長期休暇やオンライン交流の取り扱いも定めます。トラブル防止のため、連絡方法と調整期限を合意文言に落とし込みます。

財産分与と慰謝料・解決金の関係は

財産分与は原則2分法を基礎に、形成・維持寄与を踏まえて按分します。慰謝料は違法行為の損害賠償、解決金は条件全体の調整金という性質の違いがあります。重複や過大評価を避けるため、同一事情の二重計上をしない整理が必要です。分与対象の範囲(退職金見込、保険の解約返戻金、評価基準時)を明確化します。

証拠は何を揃えればよいですか

主観的主張だけでは足りません。住民票の異動、賃貸契約、光熱費・通信費明細、家計口座の出入金、別居開始時の経緯メモ、面会交流の実施記録、学校・医療の連絡記録、やり取りのスクリーンショット等を体系的に保存します。取得方法の適法性とプライバシー配慮を確認し、違法収集に該当し得る方法は避けます。

弁護士に相談する最適なタイミングは

別居前後の初動で結果が変わるため、準備段階からの相談が有益です。優先順位の整理、証拠の確保、請求項目の設計、合意文言案の作成、交渉・調停・訴訟の見通し、費用とリスクの説明を受け、現実的な選択肢を比較検討します。新人の割り当がない担当制、タイムチャージ制の透明会計で、作業内容と費用の見通しを逐次確認できます。

10.ご相談の流れと費用のご案内

ご相談の流れ

初期対応を定型化し、検討事項を漏れなく整理します。
 

  1. 事前ヒアリング:別居の有無、家計の分離状況、子の監護実績、希望条件(財産分与・養育費・面会交流・解決金の要否)を簡潔に確認します。
  2. 初回面談:事実関係を時系列で把握し、主要争点(破綻判断要素、監護、家計、証拠状況)を確定します。算定表を用いて婚姻費用・養育費の概算を提示します。
  3. 方針提案:協議・調停・訴訟の各選択肢について、見通し、想定期間、必要資料、合意文言の骨子を提示します。安全確保が必要な場合は、同時に連絡方法の限定や第三者機関の関与を設計します。
  4.  着手後の運用:連絡は記録化しやすい手段を基本とし、期限・担当・提出物を明確化します。期日間の宿題管理を徹底し、合意案は履行確保条項を含めて作成します。

費用(タイムチャージ制)

費用の透明性を確保し、作業内容とその成果を対応させます。

当事務所はタイムチャージ制を採用しています。作業単位は1分単位で計算し、月次で精算します。明細には、面談、文書作成、証拠整理、相手方・裁判所との連絡、期日出頭などの内訳を記載します。担当は経験豊富な弁護士が一貫して対応し、新人の割り当てはありません。見積りは、想定シナリオ(協議完結・調停移行・訴訟移行)ごとに作業項目と時間帯を提示します。費用対効果の観点から、証拠収集や交渉順序の優先順位を調整します。

書面とテンプレートの提供

主張立証の整合性を保ち、手戻りを抑制します。

初期段階で、時系列表、財産目録、条件案、合意文言の雛形(清算条項・履行確保・守秘)、提出書面の目次・索引テンプレートを提供します。電子データはバージョン管理を行い、提出日を記録します。録音・スクリーンショット等の取得方法は適法性の範囲で案内します。

面談方法と日程

準備負担を軽減し、迅速な意思決定を支援します。

面談は来所・オンラインのいずれも対応します。資料は事前共有が可能です。平日日中に限らず、事情に応じて夜間・土日の枠を個別に調整します。緊急対応が想定される場合は、初回面談で連絡体制を取り決めます。

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