【妊娠中に離婚!】子どもの親権者、戸籍、養育費や慰謝料を請求できるのか、弁護士が解説

子どもの妊娠中であってもやむを得ず離婚に至ってしまうケースがあるものです。
もしも妊娠中に離婚したら、子どもの親権者や戸籍はどうなるのでしょうか?
出産費用や養育費などの「お金の問題」も重要となるでしょう。

今回は妊娠中に離婚した場合の法律的な考え方について解説しますので、これから離婚を検討している方、妊娠中に離婚してしまった方はぜひ参考にしてみてください。

1.妊娠中に離婚した場合の出産費用の負担

妊娠、出産には高額な費用がかかるものです。妊娠中に離婚すると、出産費用を相手に出してもらえるのか心配になるでしょう。

出産費用を相手に請求できるのでしょうか?

1-1.離婚前は婚姻費用として請求できる

夫婦にはお互いに支え合うべき「扶養義務」があります。つまり収入の高い側は低い側へ生活費を払わねばなりません。夫婦が分担すべき生活費を「婚姻費用」といいます。
妊娠中の通院費や入院費なども婚姻費用の一部として、配偶者に請求可能です。
離婚が成立するまでの間は、当然に支払いを求められると考えましょう。

1-2.離婚後の出産費用

離婚すると「夫婦」ではなくなるので、婚姻費用の請求はできません。

ただ妊娠や出産は、男女が共同で行った性行為に由来する結果です。離婚したからといって男性側に何の責任も発生しないのは不合理といえるでしょう。
たとえば婚姻していない男女が性行為を行って「中絶」したケースでも、中絶費用を折半とする裁判例がみられます(東京高裁平成21年10月15日など)。
このような裁判所の考え方からすると、離婚後に発生する出産費用についても男性側が折半して負担すべきといえるでしょう。

離婚後に発生する出産費用については、元夫に対し最低限半額は請求し、話し合いによって相手が納得すれば、全額負担してもらってもかまいません。

2.妊娠中に離婚した場合の親権者や戸籍

妊娠中に離婚して離婚後に子どもが生まれた場合、子どもの親権者や戸籍はどうなるのでしょうか?</p?

2-1.母親が親権者になる

婚姻中に生まれた子どもの場合、父母の共同親権となりますが、離婚していたら片方の親にしか親権が認められません。
離婚後に生まれた子どもの場合、当然に母親の単独親権となるため、子どもの養育や財産管理は基本的に母親が行っていくことになります。

2-2.元夫の戸籍に入るケースが多い

妊娠中に離婚して離婚後に子どもが生まれた場合、子どもの戸籍は「元夫(父親)」の戸籍に入るケースが多いので要注意です。
民法では「離婚後300日以内に生まれた子どもは元夫の子どもと推定する」と規定されているためです。これを「嫡出推定」といいます。

婚姻時に妻が夫の戸籍に入っていた場合、子どもが生まれたら元の戸主である元夫の戸籍に入れられます。離婚すると妻だけが夫の戸籍から抜けるので、「母親と子どもの戸籍が異なる状態」になりますし、母親が旧姓に戻ったら母親と子どもの名字も異なる状態になってしまいます。

子どもの戸籍や名字を母親と同じものにそろえるには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申し立て」という手続きをしなければなりません。

なお母親が婚氏続称しており、子どもと母親の名字が同じであっても戸籍を揃えるために「子の氏の変更許可申立」を経る必要があります。

子の氏の変更許可申立の方法

子の氏の変更許可申立を受け付けているのは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立書と戸籍謄本などの必要書類を用意して、収入印紙800円と連絡用の郵便切手を添えて提出しましょう。
審判によって許可が出たら子どもの戸籍や名字を母親と同じものに揃えられます。

3.認知は必要?

妊娠中に離婚して離婚後に子どもが生まれた場合、元夫に子どもを認知してもらう必要があるのでしょうか?
実はこういったケースでは、ほとんどの場合に認知は不要です。
なぜなら「離婚後300日以内に生まれた子どもは元夫が父親」と推定されるからです。

法律上、当然に元夫が父親となるのでわざわざ認知しなくても子どもと元夫の親子関係が明らかになります。

一方、出産時期が予定より大きく遅れて離婚後300日が経過してから生まれた場合、元夫による認知が必要です。元夫が認知してくれなければ、調停や訴訟によって認知を請求しましょう。

子どもが元夫の実子でない場合

子どもが元夫の実子でない場合、離婚後300日以内に子どもが生まれたら元夫が「父親」とされてしまいます。
この場合には、元夫から「嫡出否認」の手続きをしてもらうか、親権者の方から「親子関係不存在確認」の手続きをしなければなりません。元夫からの嫡出否認の訴えは出産後1年以内に行わねばならないので、早めに対応してもらいましょう。

元夫が嫡出否認の訴えを起こさない場合、子ども(親権者)の方から家庭裁判所で「親子関係不存在確認調停」を申し立ててください。調停や訴訟においてDNA鑑定結果などを提示して「親子関係がない事実」を証明すれば、法律上の親子関係を断つことができます。

4.妊娠中の離婚で慰謝料請求できるケースは?

妊娠中に離婚を余儀なくされたら、大きな精神的苦痛を受ける方も多いでしょう。
相手の責任を追及して慰謝料請求できるのでしょうか?

実は法律上、「妊娠中に離婚した」だけでは慰謝料が発生しません。
慰謝料は「婚姻関係を破綻させるような重大な不法行為」を行った場合に発生するものだからです。妊娠中に離婚することになったとしても、元夫に全面的な責任があるとは言えないので、必ずしも慰謝料は請求できません。

一方で、以下のような事情があれば慰謝料請求が可能となります。

  • 妊娠中に妻と性交渉できなかったので夫が他の女性と性関係をもった
  • 婚姻中、夫が妻に暴力を振るったために離婚を余儀なくされた
  • 婚姻中、夫が妻へモラハラ行為を行っていた
  • 妻が専業主婦や兼業主婦で収入が少ないにもかかわらず、婚姻中夫が妻へ生活費を渡さなかった
  • 夫が正当な理由なく妊娠中の妻を置いて家出した

特に妻の妊娠中は性交渉が難しくなるので、夫が別の女性と不貞(不倫や浮気)してしまうケースも少なくありません。そのような場合、婚姻年数にもよりますが100~300万円程度の慰謝料を請求できる可能性があります。

慰謝料請求できるのか、またどのくらいの慰謝料を請求できるのか知りたい方は、個別にご案内いたしますので弁護士までご相談ください。

5.妊娠中に離婚しても養育費を請求できる?

妊娠中に離婚した場合でも、元夫に養育費を請求できるのでしょうか?

養育費は、別居親が負担すべき子どもの養育にかかる費用です。

子どもと離れて暮らしていても、親である以上は養育にかかる費用を負担しなければなりません。子どもが成人するまで養育費の支払い義務が生じます。

このように妊娠中に離婚して離婚後に子どもが生まれた場合にも養育費を請求できますが、具体的な方法は状況によって変わります。
以下でパターン別にみてみましょう。

5-1.嫡出推定がはたらく場合

離婚後300日以内に子どもが生まれて「嫡出推定」がはたらく場合、子どもと元夫の親子関係は法律上も明らかになります。元夫は「父親」として養育費を負担しなければなりません。母親は、特別な手続きをしなくても養育費を請求できます。

5-2.嫡出推定がはたらかない場合

離婚後300日が経過してから子どもが生まれ「嫡出推定」がはたらかない場合、子どもと元夫の親子関係は法律上、明らかになりません。
父子関係が明らかでない以上、当然には相手に養育費を請求できないので注意しましょう。
養育費を払ってもらうには「認知」してもらう必要があります。

相手に任意で認知を求め、応じてもらえない場合には認知調停や認知の訴え(裁判)を起こしましょう。
最終的に訴訟になったとしても、DNA鑑定などで親子関係を立証できれば認知を成立させられます。そうすれば相手が父親である事実が確定されるので、養育費を請求できます。

5-3.親子関係が明らかになったあとの養育費請求方法

相手と子どもの親子関係が明らかになり養育費を請求しても、相手が対応するとは限りません。
自分たちで話し合っても合意できない場合には、家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てましょう。調停で話し合っても解決できなければ、裁判所が審判によって相手に養育費の支払い命令を出してくれます。調停や審判で決まった内容を無視されたら元夫の給料や預貯金の差し押さえもできるので、あきらめる必要はありません。

妊娠中に離婚するなら、後悔しないためにも法律家によるアドバイスを受けて十分な知識を身につけておきましょう。
当事務所ではこれまで数多くの離婚案件を解決してまいりました。親身になってお話をお伺いいたしますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。

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