DVで離婚!慰謝料の相場や証拠の集め方、請求の流れを解説

DV被害を受けてきたことが原因で離婚する場合、相手へ慰謝料を請求できます。

そうはいっても「いくらの慰謝料を請求できるのか?」「暴力を振るう相手に対し、どうやって請求したらいいの?」と疑問や不安を感じる方が多いでしょう。

今回は相手のDVが原因で離婚する場合の慰謝料の相場、金額が高額になる場合や請求の流れについて、解説します。

1.DVで離婚する場合の慰謝料の相場は50~300万円

DVは「家庭内暴力(Domestic Violence)」です。日本でDVというと夫婦や配偶者間の暴力を指すケースが多く、中でも夫が妻に対し暴力を振るう事例が多くみられます。

暴力は相手の人格権を無視した卑劣な不法行為なので、暴力を理由に離婚するなら相手へ慰謝料を請求できます。

裁判所におけるDV慰謝料の相場は50~300万円程度と幅広くなっており、事案の個別的な事情を考慮して定められます。

2.DVの慰謝料が高額になる事情

以下のような事情があると、DVの慰謝料が高額になりやすい傾向があります。

2-1.DVの回数が多い、頻度が高い

暴力を振るった回数が多い場合や頻度が高い場合、慰謝料額は上がります。
たとえば週3回くらい暴力を振るわれた場合と月1回程度暴力を振るわれた場合とでは、前者の方が高額になるでしょう。

2-2.DVの期間が長い

暴力を振るわれた期間が長いと慰謝料額は上がりやすい傾向があります。
たとえば1年間暴力を振るわれた場合と10年間暴力を振るわれ続けたケースでは、後者の方が高額な慰謝料を請求できるでしょう。

2-3.暴力の内容が激しい、時間が長い

1回の暴力の内容が激しい場合、慰謝料額は増額されます。たとえば殴る、蹴る、髪の毛を引っ張る、引きずり回すなど激しい暴力を数時間継続した場合と、1回だけ拳で殴った場合とでは、前者の方が慰謝料額は上がります。

2-4.暴力の原因が身勝手

暴力を振るった原因が、加害者側の身勝手な理由であれば慰謝料は高額になります。
たとえば「虫の居所が悪かった」「酒を飲んで暴れた」「特に理由はない、なんとなく」などの動機であれば慰謝料は高額になりやすいでしょう。反対に「被害者が日頃から加害者を侮辱する言動を繰り返していた」などの事情があれば、高額な慰謝料は認められない可能性があります。

2-5.DVで大ケガをした、後遺症が残った

暴力を受けた被害者が大ケガをしたり後遺症が残ったりすると、高額な慰謝料が認められます。うつ病やPTSDなどの精神病になった場合にも慰謝料が増額される可能性があります。
たとえば被害者が骨折した事案で200万円の慰謝料が認められた事案がありますし(東京地裁平成18年7月27日)、一生残るような重大な後遺症が残って300万円もの慰謝料が認められた裁判例もあります(東京地裁平成18年11月29日)。

3.DV慰謝料を請求するための証拠と集め方

DVで慰謝料を請求するには、証拠が必要です。暴力を振るわれた証拠がなかったら相手は「暴力など振るっていない」と否定するでしょうから、裁判をしても慰謝料は認められません。
以下でDVの証拠と集め方をご説明します。

3-1.ケガをした部分の写真や動画

殴られたり蹴られたりしてあざや傷などのケガをしたら、その部分の写真や動画を撮影しましょう。
体のどこの部分かわかるように、近くから大写しにしたものと遠くから撮影したものなど何枚か撮影し、写真の内容を説明するメモもつけておくようおすすめします。自分でうまく撮影できない場合、親類や友人に手伝ってもらってください。
またケガは日が経つと消えてしまいますので、早い段階で撮影しましょう。

3-2.暴力を振るわれているときの録音録画

暴力を振るわれているときに録音や録画ができれば、証拠になります。
ただし暴力を振るわれている最中に録音や録画を始めるのは困難でしょうから、無理にとろうとする必要はありません。

3-3.詳細な日記

日々の暴力について詳細に記録した日記があれば、証拠になります。

  • 暴力を受けた日時(○月○日○時頃)
  • 暴力を受けた時間(○時間くらい、30分くらいなど)
  • どのような暴力を振るわれたのか

最低限、上記の3点について具体的に書きましょう。継続的に日記をつけていると信用性が高くなります。

3-4.診断書、画像、診療報酬明細書

暴力を受けたらすぐに病院へ行き、医師の診察を受けましょう。
レントゲンやCT撮影をすれば、骨折を証明できる可能性もあります。
診察を受ければ医師から診断書を出してもらえますし、病院で費用を払えば診療報酬明細書を受け取れます。
診断書や診療報酬明細書、レントゲンやCT、MRIなどの画像データも証拠になります。

なお診断書は、その場で作成を依頼しなくても、数年間であれば出してもらえるケースが多数です。ただしカルテ保存期間が5年なので、5年を超えると診断書を書いてもらえなくなる可能性があります。できるだけ早めに申請しましょう。

3-5.親や友人に助けを求めた際のメールなどの記録

暴力を振るわれたとき、親や兄弟、友人などにメールやLINEなどで連絡したら、そういったやり取りの記録もDVの証拠になります。
こちらからのメッセージと相手からの返信の両方を保存しましょう。

3-6.警察や公的機関への相談記録

警察や女性センター、DVセンターなどの公的機関へ相談した際の相談記録もDVの証拠になります。相談記録は相談先へ申請すれば出してもらえるので、必要に応じて問い合わせをしてみてください。
あまり古くなると破棄される可能性があるので、これらについても早めに申請しておくようおすすめします。

4.DVで離婚、慰謝料請求する流れ

相手から受けたDVを理由に離婚、慰謝料請求するには、以下の手順で進めましょう。

STEP1交渉

一般的な離婚事案では交渉で離婚条件を取り決め、慰謝料を払ってもらうケースが多数です。もしも相手と話ができるようであれば、離婚を切り出して慰謝料を請求するとよいでしょう。子どもの親権や養育費、財産分与などの他の離婚条件も決めるべきです。

ただし相手がDV加害者の場合、こちらが離婚を切り出すとキレてしまい、暴力を振るわれる可能性があります。身に危険が及びそうなら無理に交渉を行う必要はなく、次のステップへ進みましょう。

STEP2別居する

DV案件で安全に離婚するには、早めに別居すべきです。別居してしまえば、暴力を振るわれる危険性が大きく低下しますし、相手と離れて生活することにより恐怖感や洗脳が解けて、物事を客観的かつ冷静に捉えやすくなります。

また相手が一家の大黒柱だった場合、別居すると「婚姻費用(生活費)」を請求できます。
子どもを一緒に連れてくれば子どもの養育費も加算できるので、生活できなくなる心配はいりません。

保護命令について

別居後、相手が押しかけてくるのが心配であれば保護命令を申し立てましょう。
保護命令が出たら、相手はあなたに6か月間、接触できなくなります。違反すると逮捕される可能性があるので、たいていの人は寄り付かなくなります。
子どもや親に近づかないよう命令を出してもらうことも可能です。

STEP3離婚調停

話し合いができない状態であれば、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
調停では調停委員が間に入ってくれるので、DV加害者と直接顔を合わせて話をする必要がありませんし、相手の声も聞こえません。
こちらの言い分は調停委員を介して相手に伝えられ、相手の意見も調停委員を介してこちらへ伝えられます。

なおDV加害者は声を荒げて調停委員に食ってかかるケースもありますが、そのような粗野な言動をとると印象を悪くして不利になるだけです。こちらが心配する必要はありません。

また離婚調停では、当初にDV事案であると伝えると「別室調停」という特別扱いをしてくれます。別室調停とは夫婦それぞれが別々の部屋で待機し、調停委員が部屋間を移動する方式での調停です。相手にはこちらの部屋がどこかわからないので、裁判所内で偶然顔を合わせてしまう危険性や待合室に押しかけられる危険性もなくなります。

別居後の住所を知られたくない場合

調停申立書には申立人の住所を書く欄があり、調停を申し立てると申立書の写しが相手方に送られます。そのままでは住所を知られてしまうので注意が必要です。
相手に住所を知られたくない場合、調停申立時に「住所秘匿」を申し立てましょう。そうすれば相手に住所を知られずに済みます。

STEP4離婚訴訟

調停でも合意できなかった場合には、離婚訴訟を提起して離婚や慰謝料請求を進めましょう。
訴訟で暴力を受けた証拠を提出し、DVを立証できれば裁判官から相手に対し、離婚判決と慰謝料の支払い命令を出してもらえます。相手が離婚を拒否していても、判決が出たら離婚できますし、財産分与や年金分割も受けられます。
訴訟を弁護士に任せれば、ご本人はほとんど裁判所へ行く必要もありません。

STEP5離婚後の慰謝料請求も可能

DV案件では、「とにかく離婚を急ぎたい」という要望から相手に離婚届を書いてもらって取り急ぎ協議離婚するケースが少なくありません。その場合、慰謝料を始めとした離婚条件を取り決められず、離婚時に慰謝料を受け取れないケースが多数です。

DVの慰謝料は離婚後でも請求できます。離婚後の請求方法も基本は話し合いですが、相手が支払わない場合には「慰謝料請求訴訟」を提起します。

ただし離婚後の慰謝料請求は「離婚後3年以内」に提起しなければならないので、なるべく急いで対応しましょう。

DV案件で離婚や慰謝料請求をお一人で行うのは大変で、身に危険が生じるリスクも高いのでおすすめではありません。
弁護士に代理交渉や調停、訴訟を依頼すれば安全に離婚や慰謝料請求を進められます。DUONでは弁護士がDV被害者のサポートを行っていますので、茨城県で配偶者からの暴力にお困りの方がおられましたらお早めにご相談ください。

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