不倫慰謝料請求された/不倫慰謝料請求したい方へ|慰謝料請求の流れや注意点
不倫が発覚し、相手方やその配偶者から突然高額な慰謝料を請求されると、「本当に全額支払わなければならないのか」「支払えない場合はどうなるのか」と強い不安を抱かれる方が多くおられます。中には、請求書や内容証明郵便を前にして何も手につかない状態になってしまう方も少なくありません。
もっとも、不倫を理由とする慰謝料については、そもそも支払義務が認められない場合や、請求されている金額が相場とかけ離れている場合があります。また、支払う必要があるとしても、減額や分割払いなどの条件を交渉できる余地があるケースも多いといえます。
本記事では、不倫で慰謝料請求をされた方・慰謝料請求をしたい方を対象に、まず確認すべきポイント、避けるべき対応、交渉や解決までのおおまかな流れについて解説します。ご自身の状況を整理した上で、今後どのように対応すべきか判断する際の参考にしていただければと思います。
不倫慰謝料を請求された方へ
不倫が発覚し、突然高額な慰謝料を請求されたら「払えない」と思って困惑してしまう方がたくさんおられます。
しかし、必ずしも相手の請求額をそのまま払う必要はありません。
(1)不倫で慰謝料請求されたときにまず確認すべき3つのこと
不倫を理由として慰謝料を請求された場合でも、必ずしも請求どおりに支払わなければならないとは限りません。対応を検討する前提として、次の三点を落ち着いて確認することが重要です。
1つ目は、「そもそも慰謝料を支払う法律上の義務があるかどうか」です。
不倫とされる行為に肉体関係がなかった場合、請求を受ける前から夫婦関係がすでに破綻していた場合、相手が既婚者であることを知らなかった場合、自分の意思に反して関係を持たされた場合などは、慰謝料の支払義務が否定される可能性があります。また、不倫から長期間が経過しており、時効が成立しているかどうかも確認が必要です。
2つ目は、「不倫の事実を裏付ける証拠があるかどうか」です。
不倫の慰謝料請求が裁判になった場合、請求する側に立証責任があり、写真や動画、ホテルや宿泊の記録、やり取りの履歴など、肉体関係を推認させる証拠がどの程度そろっているかが問題となります。請求書や内容証明郵便に記載された事情と照らし合わせて、本当に不倫の事実が証拠によって支えられているのかを検討する必要があります。
3つ目は、「請求されている慰謝料の金額が相場と比べて妥当かどうか」です。
不倫慰謝料の金額は、婚姻期間の長さ、不倫の期間や態様、離婚に至ったかどうかなどの事情によって変動しますが、一般的な目安から大きく外れた高額な請求が行われることもあります。請求額だけを見てあわてて応じるのではなく、同種事案のおおよその水準と比較しながら、減額の余地がないかを検討することが重要です。
(2)不倫慰謝料についての内容証明郵便が届いたときの対応
不倫慰謝料の請求は、内容証明郵便という形式で行われることがよくあります。内容証明郵便とは、いつ、誰から誰に対して、どのような文書を送付したかを郵便局が証明する制度であり、将来、裁判になったときの証拠としても用いられます。そのため、内容証明郵便が届くと構えてしまいがちですが、それだけで直ちに法的な強制力が生じるわけではありません。
内容証明郵便を受け取ったときには、まず封を開け、請求の趣旨と金額、不倫の時期や態様、支払期限などの記載内容を確認することが重要です。この段階で、前述の三点(慰謝料を支払う義務があるかどうか、不倫を裏付ける証拠がどの程度示されているか、金額が相場と比べて妥当かどうか)を整理します。記載されている事実関係に明らかな誤りがないかも確認しておくべきです。
一方で、届いたその日のうちに、記載どおりの金額や条件で支払うことを約束したり、そのまま示談書に署名押印したりすることは避ける必要があります。請求内容が法的に妥当かどうかは、文面だけでは判断しにくい場合も多く、安易な回答が後から不利に働くおそれがあります。支払義務や請求額に疑問があるとき、あるいはどのように返答すべきか迷うときには、自分だけで結論を出す前に、内容証明郵便一式を持参のうえ弁護士に相談し、今後の対応方針について助言を受けることが望ましいといえます。
(3)不倫慰謝料を払わなくてよい場合
相手が慰謝料を請求してきても、以下のような場合には払う義務がありません。
時効が成立している
不倫の慰謝料請求権には「時効」が適用されます。
たとえ配偶者に不倫されても「不倫の事実」と「不倫した当事者」の両方の情報を知ってから3年以内に請求しないと慰謝料請求権は時効によって消滅します。
不倫した時期が古く、3年以上経過している場合には時効が成立して慰謝料を払わなくてよい可能性があるのです。ただし相手の配偶者に発覚したのが最近であれば、時効が成立していない可能性が高くなります。
また、時効期間の経過中に、こちらが「慰謝料を払います」などと言って債務を承認してしまうと時効が更新されてしまうので、発言に注意しましょう。時効が成立している場合でも、こちらから「援用」しないと時効の効果が発生しません。
不倫を開始した当初すでに夫婦関係が破綻していた
不倫を開始した段階で、すでに相手夫婦の関係が破綻していたら、慰謝料は発生しません。
不倫慰謝料が発生する根拠は、不倫によって相手の配偶者に大きな精神的苦痛を与えたからです。不倫が不法行為となり、加害者である不倫相手には慰謝料支払い義務が生じます。
ただすでに夫婦関係が破綻しているなら、不倫されても精神的苦痛は発生しないと考えられ、不法行為が成立しないので、慰謝料は発生しません。
不倫を開始した段階で相手夫婦が別居していた場合や、離婚調停中というだけでは、慰謝料の発生義務は免れませんが、ケースによっては慰謝料を払わなくてよい可能性があります。
自由意思による不倫ではない
ときには婚活アプリなどで知り合った男性から「未婚です」といわれてだまされて交際してしまうケースがあります。望まない性行為を強要されることもあるでしょう。
このように、自由意思による不倫でない場合には、故意過失がないので不法行為が成立しません。慰謝料請求を拒否できます。
なお既婚者にだまされた場合、「相手が既婚であることに気づかなかったことに過失」があれば、慰謝料支払い義務が発生する可能性もあります。
その場合でも、通常の相場より減額できる可能性は十分にあります。
(4)慰謝料を減額できるケース
以下のような場合、慰謝料を払わねばならないとしても減額できる可能性が高くなります。
相場より高額
不倫慰謝料には一定の相場があり、一般に、訴訟を起こしても相場を大きく超える慰謝料の支払い命令は出ません。
相手の請求額が相場を上回る場合、相場までは金額を落とすことができるかもしれません。相手が強硬に過大な慰謝料を請求し続けるなら、訴訟に持ち込めば相場程度にまで慰謝料額を落とせることもありますので、無理に妥協する必要はありません。
支払い能力がない
相手の請求額が相場とおりであっても、こちらに支払い能力がなければ減額できる可能性があります。日本の法制度では「持たないものからは取れない」仕組みになっているためです。
収入も資産もない人に対する支払い命令の判決を獲得しても、取り立てができないので「絵に描いた餅」にしかなりません。
それであれば「多少減額してでも、確実に慰謝料を受け取りたい」と考える人が多数です。
安定収入が見込めず資産もない状況なら、相手に現状を伝えて減額や分割払いを申し出ましょう。
(5)不倫慰謝料を請求されたときに絶対にやってはいけないこと
不倫を理由とする慰謝料請求に直面すると、不安や焦りから誤った対応をとってしまうことがあります。なかには、その一度の対応が不利な条件での合意や紛争の長期化につながる場合もあります。不倫慰謝料を請求された場面では、次のような対応は避ける必要があります。
1つ目は「相手の言うとおりにすぐ示談書へ署名したり、その場で支払ってしまうこと」
請求されている慰謝料の金額が法的に妥当か、支払義務が本当にあるのかを検討しないまま合意すると、その後に条件を見直すことは極めて困難です。示談書の内容には、将来の請求を一切しないとする清算条項など、重要な取り決めが含まれていることが多いため、細かな文言まで確認しなければなりません。
2つ目は「感情的な連絡や不用意な発言を繰り返すこと」
怒りや悔しさから相手方にきつい言葉を投げかけたり、挑発的なメッセージを送ってしまうと、その内容が保存され、後に交渉や裁判の場で不利に扱われるおそれがあります。謝罪や説明を行う場合であっても、感情的なやり取りは避け、記録に残っても問題のない表現かどうかを意識することが重要です。
3つ目は「請求書や内容証明郵便を無視して放置すること」
請求に応じる義務がないと考えられる場合であっても、まったく連絡を取らないままでいると、相手方が訴訟提起などの法的手段に踏み切る可能性が高まります。訴訟を起こされると、公開の法廷で手続が進み、時間的・精神的な負担も増大します。請求が妥当か疑問があるときこそ、放置せずに、専門家に相談したうえで適切な対応方針を検討するべきです。
(6)不倫慰謝料を払えない・払うのが難しい場合の対処法
請求された不倫慰謝料の金額が高額で、「一括ではとても払えない」「生活に大きな支障が出てしまう」と感じる方も少なくありません。そのような場合であっても、ただ諦めてしまう必要はなく、支払方法や金額について交渉の余地があることが多いといえます。
1つ目の対応としては、「慰謝料の減額交渉」を検討します。
自身の収入や預貯金、扶養家族の有無、現在の借入状況などを整理し、この金額を支払うとどのような影響が出るのかを具体的に示しながら、相手方に対して減額を求める方法です。不倫の経緯や反省の状況、社会的制裁の有無なども踏まえて話し合うことで、請求額より低い水準で合意に至る可能性があります。
2つ目の対応は、「分割払いなど支払方法の調整」を求めることが考えられます。
たとえば、一部を頭金として支払い、残額を毎月一定額ずつ支払っていく方法や、ボーナス月に増額する方法などです。支払計画が現実的であれば、相手方としても「全く回収できない」事態を避ける観点から、分割払いに応じることがあります。
「減額」と「分割払い」の両方を組み合わせて合意内容を検討する場面も多くみられます。ただし、分割払いとする場合には、将来の支払いが滞ったときの扱い(期限の利益喪失条項や遅延損害金など)についても慎重な検討が必要です。具体的にどの程度の金額や支払回数が妥当かは個別事情によって異なるため、無理のない条件を見極めるためにも、早い段階で弁護士に相談することが望ましいといえます。
(7)放置してはいけない
不倫慰謝料の請求書が届くと「支払えるはずがない」と考えて放置してしまう方もおられます。
しかし慰謝料請求書を無視してはなりません。相手が「話し合う余地がない」と考えて訴訟を提起する可能性が高くなるからです。訴訟になったら時間も労力も費用もかかり、公開法廷で審理されてしまうのでプライバシー的な問題も発生します。
慰謝料の請求書を受け取ったら、相手へ連絡するようにしましょう。
(8)慰謝料減額交渉は弁護士へ相談を
相手に慰謝料の支払い義務がないことを伝えたり、請求額が相場とかけ離れていることを指摘したりするには、民法や裁判例に基づいた法律的な主張が必要になります。不倫した本人が自ら支払いを拒否したり減額を申し出たりすると、相手方の感情を刺激し、かえって紛争がこじれるおそれもあります。
弁護士が介入することで、事実関係や証拠の内容を整理したうえで、支払義務の有無や妥当な慰謝料額について法的な観点から検討し、適切な条件での解決を目指すことができます。本人が直接やり取りをする必要がなくなるため、「相手と話すのが怖い」「何をどこまで話してよいか分からない」といった心理的負担も軽減されます。
法律事務所DUONでは、離婚や不倫慰謝料を含む家事事件を多く取り扱っており、経験豊富な弁護士が担当します。新人弁護士のみが対応することはなく、タイムチャージ制により、どの作業にどの程度の費用がかかるのかをできる限り明確にしています。慰謝料の問題だけでなく、今後の離婚や財産分与、親権なども見据えて総合的に検討したい方は、早めにご相談いただくことをおすすめします。
不倫慰謝料を請求したい方へ
夫や妻が不倫した場合、不倫相手や配偶者へ慰謝料請求できます。慰謝料請求の手順や不倫の証拠の集め方、慰謝料額の相場を知って、適切な方法で慰謝料請求を進めましょう。
(1)慰謝料請求の手順
STEP1 証拠を集める
不倫の慰謝料を請求するには、まずは証拠集めが重要です。証拠がないのに慰謝料を求めても、相手は不倫を否定して支払いを拒否する可能性が高いからです。相手に請求通知を送る前に、「肉体関係を立証できる証拠」を集めましょう。
STEP2 慰謝料請求する
証拠が揃ったら、慰謝料請求の通知を送ります。多くの場合には「内容証明郵便」を用います。内容証明郵便とは差出人や郵便局に相手に送付した郵便と同じ控えが残るものです。
内容証明郵便を使うと、いつ相手にどのような郵便を送ったか後になっても証明されるので、相手から「受け取っていない」とごまかされる心配がありません。裁判の証拠にもよく利用されています。
内容証明郵便は手渡し式になっていて書式も特殊なため、相手にプレッシャーを与える効果もあります。
特に弁護士名で内容証明郵便を送るとインパクトが強く、相手が真摯に慰謝料支払いに応じる可能性が高まります。
STEP3 交渉する
慰謝料の請求通知を送ったら、相手と交渉して具体的な支払い額や支払い方法を決定します。相手からは減額を主張されるケースも多く、分割払いの提案を受ける可能性もあります。慰謝料の交渉では、どこまで妥協すべきか検討し、適正な落ち着きどころを探る必要があります。
接触禁止条項について
不倫されても夫や妻と離婚しない場合には、慰謝料請求の交渉において「配偶者と接触しないこと」を約束させる必要があります。そうでないと、慰謝料支払い後に交際が復活してしまうおそれがあるためです。職場が同じで接触を完全に避けるのが難しい場合には、「プライベートで一切接触しない」と約束させましょう。
求償権の放棄
不倫相手に慰謝料請求をするときには、求償権にも注意が必要です。求償権とは、連帯債務者の一方や保証人が支払いをしたときに、負担部分を超えた支払いについて他の連帯債務者や主債務者へ返還請求できる権利です。
不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の連帯債務になるので、不倫相手が全額払ったら、後で求償権を行使して配偶者へお金の返還を請求できます。求償権を行使されると配偶者が不倫相手にお金を返さないといけないので、「慰謝料を取り戻される」のと同じになってしまいます。
配偶者と離婚するならあまり気にしなくてもよいですが、婚姻関係を続けるなら、交渉の際に求償権を放棄させておきましょう。
STEP4合意書を作成する
合意ができたら慰謝料支払いに関する合意書を作成しましょう。口約束では支払われないリスクが高まるので、書面作成は必須です。
慰謝料支払いの合意書には、以下のような内容を記載してください。
- 相手方らが不倫した事実を認める
- 慰謝料の金額
- 支払期限
- 支払い方法
- 振込先の口座
- お互いに口外しないこと
- 接触禁止条項
- 求償権の放棄
- 清算条項
合意書ができたら、日付を入れてお互いが署名押印しましょう。
STEP5 公正証書を作成する
特に慰謝料の分割払いを認める場合には、合意書を公正証書にすべきです。分割払いにすると途中で払われなくなるリスクが高まります。公正証書があれば、入金されなかったときにすぐに相手の預金や給料などの資産を差し押さえられるので、回収可能性が大きく高まります。
STEP6 訴訟を起こす
相手と話し合っても合意できない場合には、慰謝料請求訴訟を起こさねばなりません。訴訟では、不倫を証明する必要があるので、事前に集めておいた証拠を使って肉体関係を証明しましょう。相手からもさまざまな反論をされるため、適切に対応しなければ不利になってしまいます。
訴訟は非常に専門的で複雑な手続きなので、弁護士へ任せた方が得策です。
(2)不倫の証拠
不倫の証拠を集めるときには「肉体関係を証明できるもの」が必要です。
法律上の「不貞」とは、既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持つことを意味するためです。写真や動画、ホテルに行ったことがわかるメールやDM、相手の家に宿泊したことがわかる資料、肉体関係を示す日記などがあると効果的です。
ただし通話明細や普段の会話のLINEなどの間接的な証拠であっても積み重ねると不貞を立証できる可能性があります。
(3)不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料の相場は、離婚する場合で100~300万円程度、離婚しない場合には100万円以下の金額です。婚姻期間が長ければ慰謝料額が上がる傾向があります。個別事案でどのくらいの金額が適切か知りたい場合には、弁護士までご相談ください。
DUONは茨城県で男女トラブルの解決に力を入れている法律事務所です。不倫慰謝料に関してお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。








