公務員の離婚相談
~夫婦の片方や双方が公務員・財産分与、退職金、年金分割はどうする?~

片方や双方が公務員の夫婦が離婚する場合、一般の会社員とは異なる注意が必要です。
たとえば公務員は「共済貯金」をしているケースも多く、職が安定しているので退職金を財産分与に含めやすいなどの特徴があります。

今回は公務員が離婚するときの注意点をお伝えしますので、ご自身や相手方が地方公務員や国家公務員として働いている方はぜひ参考にしてみてください。

1.公務員の離婚の注意点

公務員が離婚するときの特徴や注意点をまとめると、以下の通りです。

  • 共済貯金をしている場合が多い
  • 退職金を財産分与に含めやすい
  • 退職金の計算が簡単
  • 退職金が高額になりやすい
  • 年金分割できる(共済年金)
  • 養育費を払ってもらいやすい
  • 支払いを受けられなければ差押が可能

以下でそれぞれ見ていきましょう。

2.会社員と公務員の財産分与の相違

公務員と一般の会社員とでは、財産分与の際に注意が必要です。主に「共済貯金」や「退職金」についての問題があります。

2-1.共済組合の貯金がある

共済貯金とは、公務員が共済組合を通じて行っている積立貯金です。
地方公務員も国家公務員も、公務員の自助団体である「共済組合」に加入しています。
共済組合では公務員の生活を助けるための様々なサービスを提供しており、その1つに「共済貯金」があります。
共済貯金の利率は民間銀行よりかなり高いので、多くの公務員が共済貯金で積立を行っています。

参考 民間の金融機関の年間利率は0.001%程度であるのに対し、共済貯金の年間利率は2%近くになるケースもある

共済貯金をしている場合、毎月の給与から天引きされるので、給与明細をみると共済貯金をしているかどうかがわかります。

共済貯金も財産分与の対象になるので、必ず内容を調査して計算に含めましょう。
共済組合に問い合わせれば現在の残高等を開示してもらえます。

2-2.退職金を財産分与に含めやすい

公務員の財産分与では「退職金」についても一般の会社員と異なる取り扱いになる可能性があります。

離婚後に受け取る退職金は、必ずしも財産分与対象に含まれるわけではありません。

一般的には、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 離婚後10年以内に退職予定
  • 退職金が支給される蓋然性が高い

会社に退職金規定があってこれまでに運用実績があり、退職金の支給がほぼ確実でなければ将来の退職金を財産分与対象にするのは難しくなるでしょう。

一方で公務員の場合、退職金が支給されるのは「ほぼ確実」といえます。
民間企業の会社員と違い、実際の退職時期が離婚から遠い先であっても退職金を財産分与に含められる可能性があります。

2-3.公務員の退職金は簡単に計算できる

公務員の場合、退職金の計算が一般の会社員と比べて簡単です。自治体や国により、勤続年数ごとの退職金計算方法が明らかにされているためです。
民間企業の場合、退職金規定は公開されていませんし、必ずしも明確に規定されている会社ばかりではありません。ポイント制などが導入されて計算方法が複雑、あるいは将来の退職金額を確定しにくいケースもよくあります。

計算が簡単なことは、退職金の財産分与計算をするときにメリットとなるでしょう。

2-4.退職金が高額になりやすい

公務員の退職金は、一般企業よりも高額になりやすい傾向があります。
民間企業では1000万円にも満たないケースが珍しくありません。そんな中、定年まで勤め上げた公務員の退職金は平均的に2000万円を超えています。
実際に退職する時期が遠い将来であっても退職金を財産分与に含められるので、忘れずに請求しましょう。

2-5.公務員の退職金額の調べ方

公務員の退職金額は、所属する自治体や省庁などで確認できます。本人に資料を入手させて、試算してみましょう。

3.公務員の年金分割

公務員と離婚する場合にも「年金分割」を適用できます。
年金分割とは、婚姻中に払い込んだ年金保険料を分割する手続きです。離婚時に年金分割しておくと、将来年金を受け取る年齢になったときに受給額が自動調整されます。年金の少ない方の受給額が加算され、多い方の受給額が減らされるので、少ない方にとっては年金分割のメリットが大きくなります。

公務員は「厚生年金(共済年金)」に加入しています。
平成27年9月までは共済年金でしたが、同年10月に「厚生年金」に一本化されたので、今は厚生年金と同様の方法で年金分割ができます。

3-1.合意分割

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
合意分割は、当事者が話し合って合意の上行う年金分割です。被分割者(分割される側)が年金分割に合意し、分割割合も決めなければ成立しません。

合意分割を希望するなら、事前に年金事務所へ「年金分割情報通知書」を申請、取得しましょう。そこに書かれている分割割合の範囲内で相手と話し合い、合意書を作成します。
そのうえで離婚後に相手と一緒に年金事務所へ行って「標準報酬改定請求書」を提出すれば合意分割の手続きが完了します。

3-2.3号分割

3号分割は、被分割者の同意が不要な年金分割です。
平成20年4月以降の年金保険料につき、請求者が相手の「3号被保険者」になっているケースが適用対象です。平成20年4月以降に結婚した方で、一方が公務員の「扶養」に入っている場合に3号分割できると考えましょう。
3号分割の場合、相手との話し合いや合意は不要です。離婚後、請求者が1人で年金事務所へ行って「標準報酬改定請求書」を提出すれば年金分割の手続きが完了します。

4.養育費や滞納対策について

公務員が離婚するときに未成年の子どもがいたら、親権者を決める必要があります。公務員だからといって親権を取得しやすいわけではありません。これまでの養育実績や現在の子どもとの関係、離婚後子どもと過ごせる時間を作れるかなどの総合的な観点から親権者を決定しましょう。

養育費については、一般の会社員や自営業者と異なる特徴があります。相手が公務員で自分が親権者となったら、一般的なケースより養育費の支払いを受けやすくなります。

4-1.養育費が払われやすい理由

相手が公務員の場合、なぜ養育費が払われやすいのでしょうか?
それは仕事を途中で辞める公務員が極めて少なく、給料やボーナスが確実に支払われ続けるからです。
また養育費を滞納して給料を差し押さえられると本人としては非常に居心地が悪くなるため、「差し押さえのリスクを回避したい」というプレッシャーもはたらきます。

相手が公務員の場合、きちんと養育費の取り決めをして公正証書や調停調書を作成しておけば、ほとんど確実に養育費を払ってもらえるでしょう。

財産分与や慰謝料などの支払についても同様です。離婚公正証書さえ作成しておけば、不払いリスクはかなり軽減されます。

4-2.滞納されたら給料を差し押さえる

ただし公務員の中にも養育費や財産分与などのお金を払わない人はいます。
万一滞納されたら、給料を差し押さえましょう。
公務員の給料を差し押さえるときには、裁判所へ申立をして相手の所属する自治体や国へ差押命令を発布してもらいます。自治体や国の場合、一般の会社や事業主と異なり、本人と結託して債権者に給料を払わない(たとえば「給料は払っていない」、「すでに本人が退職した」などと主張してごまかす)などの不正は絶対に行われません。

1回給料を差し押さえると、負債が完済されるまで相手の給料やボーナスから差し押さえ分が天引きされ、自動的に債権者へ送金されてきます。
養育費や婚姻費用などの将来分についても差押えができるので、滞納対策として極めて有効な手段となるでしょう。
なお給料を差し押さえると、相手の方から「きちんと支払うので差押を取り下げてほしい」と申し入れてくることも少なくありません。相手を信用できそうなら、いったん取り下げをして様子をみてもよいでしょう。

相手の共済貯金も差し押さえの対象になりますし、相手が退職する場合には退職金の差押も可能です。

以上のとおり公務員が相手の場合、一般の会社員と比べて養育費の滞納リスクや不払いリスクは極めて低くなるといえます。

4-3.離婚公正証書を作成する

養育費や財産分与の支払を滞納されたとき、すぐに差し押さえるには「公正証書」が必要です。公正証書がなかったら、一旦調停を申し立てて権利を確定しなければなりません。
公務員と離婚するなら、必ず離婚条件を明確にした「離婚公正証書」を作成しておきましょう。

 

 

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