経済的DV(経済的ハラスメント)は、暴力の痕跡が残らないため、被害者自身が気づきにくく、周囲からも理解されにくい特徴があります。生活費を渡してもらえない、働くことを禁じられる、収入を隠されるなどはすべて、経済的DVの可能性がある行為です。
本コラムでは、経済的DVの定義と法的な位置づけについて解説したうえで、経済的DVの状況にあるかどうかを診断できる危険度チェックリストを紹介します。さらに、経済的DVを理由とした離婚の方法や、慰謝料・財産分与のポイント、弁護士への相談の進め方について詳しく解説します。
1 経済的DV(経済的ハラスメント)とは?その定義と法的な位置づけ
離婚のお悩み--離婚問題に強い弁護士に相談してみませんか?
初回相談は無料。電話 6:00–24:00で予約可。対面/Zoom、秘密厳守で対応します。
- 離婚問題に強い経験豊富な実力派弁護士が対応
- 1分単位で費用が“見える”(タイムチャージ制)だから安心
※ご相談内容により一部有料となる場合があります。
経済的DVとは、家庭内での金銭的な力関係を利用して配偶者を精神的に圧迫することを指します。
たとえば、生活費を渡さない、収入や貯金額を教えない、働くことを禁じる、自由に使えるお金を与えないなどが典型例です。これらは一見すると「家庭内の金銭トラブル」に見えるかもしれませんが、実際には相手の経済的自立を妨げ、精神的な自由を奪う深刻な人権侵害です。
法的には、経済的DVも身体的・精神的暴力と同様に「ドメスティック・バイオレンス(DV)」の一形態として認識されています。民法第752条では、夫婦には「同居・協力・扶助の義務」があると定められており、正当な理由なく生活費を渡さない行為などは、この義務に違反し「悪意の遺棄」(民法770条1項2号参照)に該当するとして離婚原因になり得ます。
2 あなたの被害状況をチェック!経済的DV危険度リスト
経済的DVは、被害者自身が「これって普通のこと?」と感じてしまうため、長年DVと気づかずに苦しむケースが少なくありません。以下のような状況に心当たりがある方は、経済的DVの被害を受けている可能性があります。該当数が多いほど、経済的DVの可能性が高まります。
- 配偶者が生活費をほとんど渡してくれず、日常の買い物や医療費にも困っている
- 家計の収支や貯金額を教えてもらえず、通帳や明細を見せてもらえない
- 自分の収入を配偶者がすべて管理し、自由に使わせてもらえない
- 働きたいと伝えても「家にいろ」「育児に専念しろ」と言われ、就労を 妨げられている
- 買い物のたびにレシートの提出を求められ、使途を細かく詮索される
- 自分の口座やクレジットカードを勝手に使われたことがある
- 配偶者が自分だけ贅沢をし、あなたには最低限の支出しか認めない
- お金のことで意見すると「稼いでないくせに」「無駄遣いばかり」と人 格を否定される
- 離婚や別居を考えても「お金がないだろ」「出て行っても生活できな い」と脅される
- 経済的な不安や制限のせいで、精神的に追い詰められていると感じる
以上の項目の該当数と経済的DVの危険度の関係は以下のとおりです。
・1〜2項目該当
経済的DVの可能性は低いかもしれませんが、状況によっては「夫婦間の金銭感覚の不一致」や「一時的な不公平」が背景にあることもあります。冷静に話し合い、改善の余地があるかを探る必要があります。
・3〜5項目該当
経済的DVの兆候が見られます。特に「生活費が渡されない」「収入を教えてもらえない」「働くことを制限されている」などの項目が含まれる場合は、支配や制限の傾向が強くなっている可能性があります。弁護士などの専門家への相談を検討する必要があるでしょう。
・6項目以上該当
経済的DVの可能性が高く、継続的な支配や精神的苦痛が生じていると考えられます。この段階では、離婚や別居、法的措置を視野に入れた具体的な対応を始める必要があります。弁護士やDV相談窓口に早急に相談し、証拠の整理や今後の生活設計を始めましょう。
3 経済的DVを原因とする「離婚の方法」と取るべきステップ
経済的DVを受けていることを理由に離婚する場合には、以下の方法・ステップを踏むこととなります。
3-1 協議離婚
経済的DVを理由に離婚を考える場合、まずは「協議離婚」から検討します。これは、夫婦双方が話し合いによって合意し、離婚届を提出する方法です。
しかし、経済的DVをする配偶者との間で離婚の話し合いがスムーズに進むことは多くありません。
3-2 調停離婚
経済的DVの加害者が協議での離婚に応じない場合や、条件面で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停では、主に調停員を介して話し合いが行われ、離婚や条件面に合意できた場合には離婚を成立させることとなります。
逆に合意ができない場合には、調停は不成立となり、この段階での離婚はできません。
3-3 裁判離婚
調停でも離婚の合意に至らない場合には、裁判を起こすこととなります。裁判で離婚ができるのは、民法で定められている場合に限定されています。
経済的DVの場合は、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するといえるかどうかが問題となります。
裁判では、経済的DVの具体的な証拠が求められるため、日頃から家計簿や通帳のコピー、LINEやメールのやり取り、音声記録などを残しておくことが重要です。
3-4 婚姻費用の請求
離婚前に別居を検討する場合は、婚姻費用(生活費)分担請求を家庭裁判所に申し立てることも可能です。これは、別居中であっても夫婦である限り、生活費を分担する義務があるという法的根拠に基づいています。
一般的には、まず調停を申立て、調停で合意ができない場合には、審判手続きに移行して、裁判官が審判を下して婚姻費用の支払いを命じることとなります。
4 経済的DVが原因で離婚する際の「慰謝料」と「財産分与」の視点
では、経済的DVが原因で離婚する場合、慰謝料の請求や財産分与に当たっては、どのような視点を持つことが必要でしょうか。
4-1 経済的DVを理由とする慰謝料の請求
経済的DVによって精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料が認められるためには、①加害行為がどれくらい継続しているか、②どの程度悪質か、そして③被害を立証できるかが重要なポイントとなります。
たとえば、長年にわたって生活費を渡されなかった、就労を妨害され続けて働くことができなかった、経済的な不安から精神的疾患を発症したなどの事情があり、これを立証する証拠(預金通帳やLINEのやりとり、診断書など)があれば、慰謝料が認定められやすくなります。
慰謝料の相場はケースによって異なりますが、100万円から300万円程度が一般的とされています。ただし、証拠が不十分な場合は認められないことも少なくないため、記録の保存が極めて重要です。
4-2 経済的DVで離婚する場合の財産分与
一方、財産分与については、婚姻期間中に築いた財産は原則として「共有財産」として2分の1ずつ分け合うのが基本です。経済的DVの加害者が家計を独占していた場合でも、被害者が専業主婦であったとしても、財産分与の権利は等しく認められます。むしろ、被害者が経済的に自立できない状況に置かれていたことを考慮し、分与割合や方法に配慮がなされることもあります。
たとえば、婚姻期間中に夫が高収入を得ていたにもかかわらず、妻には生活費の最低限しか渡さず、家計の情報も一切開示せず、妻が働くことも禁じていたなどの事情があるケースで、離婚調停や離婚裁判が行われれば、通常の2分の1の財産分与に加え、離婚後に妻が生活を再建させるために分与割合を増加させる形で調整されることもありえます。
5 弁護士へ相談し、あなたに最適な離婚方法と金銭請求の可能性を確認
経済的DVは、外からは見えにくく、被害者自身も、我慢すべきことと思い込んでしまいがちです。しかし、これは決して些細な問題ではなく、被害者の尊厳と人生に深く関わる重大な問題です。
離婚を検討する際には、まず信頼できる弁護士に相談し、自分の状況が法的にどのように評価されるのかを確認することが大切です。
弁護士法人法律事務所DUONは、経済的DVを原因とする離婚の実績が豊富です。事案に応じて、協議離婚・調停・裁判のいずれが適切かを判断し、さらに慰謝料・財産分与・婚姻費用の請求についても可能な限り対応します。
もしかして自分は経済的DVを受けているのかもしれないと考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。お話を丁寧に伺い、必要なサポートをご提案します。
お一人で判断せずに、離婚に強い弁護士に相談してみませんか?
養育費・婚姻費用・財産分与などのお悩みに、経験豊富な弁護士が対応します。
対面/Zoomどちらも可能。
※ご相談内容により一部有料となる場合があります。









