経済的DV(経済的ハラスメント)は、暴力の痕跡が残らないため、被害者自身が気づきにくく、周囲からも理解されにくい特徴があります。生活費を渡してもらえない、働くことを禁じられる、収入を隠されるなどはいずれも経済的DVに当たり得る行為です。
本コラムでは、経済的DVの定義と法的な位置づけについて解説したうえで、経済的DVの状況にあるかどうかを診断できる危険度チェックリストを紹介します。さらに、経済的DVを理由とした離婚の方法や、慰謝料・財産分与のポイント、弁護士への相談の進め方について詳しく解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事案の見通しは事情により大きく異なるため、具体的には弁護士へご相談ください。
経済的DV(経済的ハラスメント)とは?その定義と法的な位置づけ
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経済的DVとは、金銭の支配や制限を通じて、相手の生活や選択を狭め、精神的苦痛を与える行為をいいます。たとえば、生活費を渡さない、収入や貯金額を教えない、働くことを禁じる、自由に使えるお金を与えないといった行為が典型例です。
これらは一見すると「家庭内の金銭トラブル」に見えることもありますが、相手の経済的自立を妨げ、生活の自由を奪う深刻な問題です。
法的にも、経済的DVはDV(配偶者等からの暴力)の一類型として論じらます。DV防止法でいう「暴力」には、身体に対する暴力だけでなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれると整理されています。経済的支配や就労妨害などが、状況によってはこのような「心身に有害な影響を及ぼす言動」として問題となり得ます。
また、民法上も夫婦には同居・協力・扶助の義務(民法752条)や、婚姻から生ずる費用を分担する義務(民法760条)があります。正当な理由なく生活費を渡さない、相手を著しく困窮させるといった事情がある場合、個別の事情によっては「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)や「婚姻を継続し難い重大な事由」(同1項5号)として、離婚原因になり得ます。
経済的DVのタイプ別の具体例
経済的DVは「お金を渡さない」だけではありません。家計の情報や就労の自由を奪い、相手を経済的に縛る行為が重なると、生活の選択肢が狭まり、逃げ道がなくなっていきます。「うちは家計が厳しいだけ」と感じていても、話し合いの余地がなく一方的に支配されている場合は注意が必要です。
① 生活費を渡さない/必要最低限しか渡さない
- 生活費がほとんど出ず、食費・医療費・子どもの用品代などに困る
- 理由の説明がなく「我慢しろ」で終わり、話し合いができない状態が続く
② 家計情報を遮断する(収支・貯金・通帳・明細を見せない)
- 家計の実態が分からず、将来の見通しが立てられない
- 「お金はあるはずなのに、ないと言われる」「節約を強いられるのに根拠が示されない」
③ 自分の収入を取り上げて管理する(自由に使わせない)
- 給与振込口座を実質的に握られ、必要な支出でも許可が必要になる
- 外出や受診、交友関係まで制限されやすくなる
④ 就労を妨げる(働くことを禁じる/妨害する)
- 「家にいろ」「働くなら離婚だ」などと言って働くことを禁じる
- 面接や通勤を妨害する、育児・家事を理由に一方的に選択肢を奪う
⑤ 支出を過度に監視する(詰問・人格否定とセットになりやすい)
- 買い物のたびにレシート提出を求める、少額でも責める
- 家計管理の名目でも、人格を傷つける言動が続く
⑥ 借金や名義利用を強いる(法的トラブル化しやすい)
- 口座・クレジットカードを勝手に使う、ローンやカード契約をさせる
- 連帯保証人を迫る、断ると脅しや暴言がある
⑦ 「出て行っても生活できない」など不安を材料に行動を縛る
- 別居・離婚を考えると「お金がないだろ」「子どもに会えなくする」などと言われる
- 経済的不安を利用して、決断や行動を妨げる
あなたの被害状況をチェック!経済的DV危険度リスト
経済的DVは、被害者自身が「これって普通のこと?」と感じてしまうため、長年DVと気づかずに苦しむケースが少なくありません。
以下のような状況に心当たりがある方は、経済的DVの被害を受けている可能性があります。該当数が多いほど、経済的DVの可能性が高まります。
- 配偶者が生活費をほとんど渡してくれず、日常の買い物や医療費にも困っている
- 家計の収支や貯金額を教えてもらえず、通帳や明細を見せてもらえない
- 自分の収入を配偶者がすべて管理し、自由に使わせてもらえない
- 働きたいと伝えても「家にいろ」「育児に専念しろ」と言われ、就労を 妨げられている
- 買い物のたびにレシートの提出を求められ、使途を細かく詮索される
- 自分の口座やクレジットカードを勝手に使われたことがある
- 配偶者が自分だけ贅沢をし、あなたには最低限の支出しか認めない
- お金のことで意見すると「稼いでないくせに」「無駄遣いばかり」と人 格を否定される
- 離婚や別居を考えても「お金がないだろ」「出て行っても生活できな い」と脅される
- 経済的な不安や制限のせいで、精神的に追い詰められていると感じる
以上の項目の該当数と経済的DVの危険度の関係は以下のとおりです。
・1〜2項目該当
経済的DVの可能性は低いかもしれませんが、状況によっては「夫婦間の金銭感覚の不一致」や「一時的な不公平」が背景にあることもあります。冷静に話し合い、改善の余地があるかを探る必要があります。
・3〜5項目該当
経済的DVの兆候が見られます。特に「生活費が渡されない」「収入を教えてもらえない」「働くことを制限されている」などの項目が含まれる場合は、支配や制限の傾向が強くなっている可能性があります。弁護士などの専門家への相談を検討する必要があるでしょう。
・6項目以上該当
経済的DVの可能性が高く、継続的な支配や精神的苦痛が生じていると考えられます。この段階では、離婚や別居、法的措置を視野に入れた具体的な対応を始める必要があります。弁護士やDV相談窓口に早急に相談し、証拠の整理や今後の生活設計を始めましょう。
経済的DVとはいえない場合と判断のポイント
家計の管理は家庭ごとに事情が異なるため、すべてが直ちに経済的DVと断定できるわけではありません。たとえば、収入が一時的に減っている時期や、住宅ローンなど固定費が重い時期に、支出を抑える必要があるケースはあります。また、夫婦で合意して家計を一括管理し、必要な費用が都度確保されているなら、家計管理の方法として成立することもあります。
ただし、判断で重要なのは次の点です。
- 合意があるか(本人の意思に反して一方的に決められていないか)
- 情報が共有されているか(収支・通帳・明細を見られるか)
- 必要な支出が確保されているか(医療費・子どもの費用などを含む)
- 反論や相談の余地があるか(話し合いが成立するか)
家計が厳しいと言いながら根拠を示さない、通帳や明細を見せない、話し合いを求めても取り合わないといった状態が続くと、相手は生活の判断材料を奪われます。さらに「稼いでないくせに」「文句を言うなら出て行け」など、金銭と結びついた罵倒や脅しが重なる場合は、家計の問題ではなく支配の問題になっている可能性があります。
判断に迷うときは、何が起きたのかを日付とともに記録し、家計の資料ややり取り(LINE・メール等)を残しておくと、後で状況を整理しやすくなります。
経済的DVを原因とする「離婚の方法」と取るべきステップ
経済的DVを受けていることを理由に離婚する場合には、以下の方法・ステップを踏むこととなります。
1 協議離婚
経済的DVを理由に離婚を考える場合、まずは「協議離婚」から検討します。これは、夫婦双方が話し合いによって合意し、離婚届を提出する方法です。
しかし、経済的DVをする配偶者との間で離婚の話し合いがスムーズに進むことは多くありません。
2 調停離婚
経済的DVの加害者が協議での離婚に応じない場合や、条件面で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停では、主に調停員を介して話し合いが行われ、離婚や条件面に合意できた場合には離婚を成立させることとなります。
逆に合意ができない場合には、調停は不成立となり、この段階での離婚はできません。
3 裁判離婚
調停でも離婚の合意に至らない場合には、裁判を起こすこととなります。裁判で離婚ができるのは、民法で定められている場合に限定されています。
経済的DVの場合は、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するといえるかどうかが問題となります。
裁判では、経済的DVの具体的な証拠が求められるため、日頃から家計簿や通帳のコピー、LINEやメールのやり取り、音声記録などを残しておくことが重要です。
4 婚姻費用の請求
離婚前に別居を検討する場合は、婚姻費用(生活費)分担請求を家庭裁判所に申し立てることも可能です。これは、別居中であっても夫婦である限り、生活費を分担する義務があるという法的根拠に基づいています。
一般的には、まず調停を申立て、調停で合意ができない場合には、審判手続きに移行して、裁判官が審判を下して婚姻費用の支払いを命じることとなります。
経済的DVが原因で離婚する際の「慰謝料」と「財産分与」の視点
1 経済的DVを理由とする慰謝料の請求
経済的DVによって精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料が認められるか、いくらになるかは事案により大きく異なりますが、主に次の点が重要になります。
- 加害行為がどれくらいの期間継続したか
- 行為の悪質性(生活困難の程度、脅し・人格否定の有無、就労妨害の程度など)
- 被害の内容を裏付ける証拠があるか
「生活費が渡されず日常生活に支障が出た」「就労を妨げられ収入を得られなかった」「経済的不安が続き心身に不調が生じた」などの事情がある場合は、慰謝料請求を検討できることがあります。
※慰謝料額の見通しは、証拠の量と質、当事者の収入・資産、生活への影響などによって変わります。一般的な“相場”だけで判断せず、まずは状況整理から始めることが大切です。
慰謝料請求のために確保しておきたい証拠
手元にあるものからで構いません。次のような記録があると整理が進みます。
- 通帳・入出金履歴・クレジット明細(生活費が渡されていない、支払いが偏っている状況が分かるもの)
- 家計簿やメモ(生活費の不足、立替えの回数、必要支出を我慢した事実が分かるもの)
- 生活費の請求や就労制限に関するLINEやメール(拒否、罵倒、脅し、条件付けなどが残っているもの)
- レシート提出を強要された記録、詰問のやり取り(監視や萎縮の状況が分かるもの)
- 口座・カードの不正利用が分かる資料(利用履歴、請求書など)
- 借金をさせられた、名義利用を強いられた資料(契約書、借用書、返済履歴、督促状など)
- 心身の不調がある場合の診断書や通院記録(原因や経過を説明しやすいもの)
2 経済的DVで離婚する場合の財産分与
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を分ける制度です。原則として2分の1ずつ分け合うのが基本で、被害者が専業主婦(主夫)であっても権利は等しく認められます。
経済的DVの加害者が家計を独占し、預貯金や資産状況を開示しないケースでは、財産の把握(調査)が大きなポイントになります。通帳の履歴、給与明細、保険証券、年金情報、確定申告書・源泉徴収票など、把握に役立つ資料があれば確保しておくとよいでしょう。
また、事情によっては分与の「方法」(支払い方法・時期・住居の確保等)が調整されることがあります。最終的な結論は個別事情によるため、早めに見通しを立てることが重要です。
3 養育費(子どもがいる場合)
未成年の子どもがいる場合、離婚後の生活を支えるために養育費を取り決めることが重要です。養育費は、子どもの生活や教育のために支払われるもので、支払う側の収入状況と、受け取る側の監護状況などを踏まえて金額を定めます。
経済的DVがあるケースでは、話し合いの場で不利な条件を押し付けられやすいため、口約束で済ませないことが大切です。協議で合意できる場合でも書面化し、必要に応じて公正証書化を検討しましょう。協議が難しい場合は、家庭裁判所の調停を利用して決めることができます。
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経済的DVは、外からは見えにくく、被害者自身も、我慢すべきことと思い込んでしまいがちです。しかし、これは決して些細な問題ではなく、被害者の尊厳と人生に深く関わる重大な問題です。
離婚を検討する際には、まず信頼できる弁護士に相談し、自分の状況が法的にどのように評価されるのかを確認することが大切です。
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「これって経済的DVなのだろうか」「別居や離婚を考えたいが、お金のことが不安で動けない」と感じている方は、一度ご相談ください。お話を丁寧に伺い、協議・調停・裁判のどの手続が合うか、慰謝料や財産分与、婚姻費用、養育費などの見通しを整理したうえで、次の一歩を一緒に考えます。
もしかして自分は経済的DVを受けているのかもしれないと考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。お話を丁寧に伺い、必要なサポートをご提案します。
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