子どもの親権を決める流れと親権を獲得するための対処方法
離婚の際、子どもの親権はどのような方法で決めればよいのでしょうか?
特に夫婦双方が親権を希望する場合にはスムーズに決まりにくく「親権トラブル」が起こりやすいので注意が必要です。
今回は子どもの親権を決定するまでの流れや親権を獲得するための対処方法を弁護士の視点から解説しますので、「離婚後、どうしても親権を取得したい方」はぜひ参考にしてみてください。
親権をどちらが担うかは、子の生活全体に直結する重要な問題です。家庭裁判所は父母の性別や感情ではなく、子の利益を中心に、監護実績、生活の継続性、子の意思、養育時間の確保、健康状態、住環境、支援体制などの要素を総合評価します。
本ページでは、協議、調停、審判、訴訟の各段階で何を準備し、どの順序で主張立証を行うかを整理してお伝えします。
親権の判断基準
親権者を指定するにあたって、家庭裁判所は個別事情を総合的に考慮し、いずれも「子の利益(子の心身の健全な成長に資するか)」を中心に据えて評価されます。
監護実績
過去から現在に至る日常的な養育の実績です。食事・通院・学校や園との連絡・送迎・生活全般の管理の具体例を記録で示します。
継続性
子が慣れた生活環境(居所・学校・友人関係等)を中断しないことの重要性です。環境変更の必要性と影響を具体的に検討します。
子の意思・年齢
子の成熟度に応じ、意思の安定性や形成過程を踏まえて評価します。面談調査や意見聴取の結果が参照されます。
養育時間の確保
就労形態や勤務時間、支援者の有無を含め、平日・休日の具体的な関与可能時間で示します。
心身の健康状態
監護に影響する疾病や依存の有無、治療状況、ストレス要因の管理状況を確認します。
経済・住環境
収入水準そのものよりも「安定性」と「必要経費の負担可能性」、居住スペースの安全性・通学利便性などが重視されます。
兄弟姉妹不分離
きょうだいを同一の監護環境に置くことの適合性を検討します。例外が合理的かどうかも併せて判断します。
監護補助体制
祖父母等の補助者、学童・保育等の利用状況を含め、継続的な支援体制の現実性を示します。
これらの観点は一部が満たされれば足りるというものではなく、相互に関連します。主張立証の際は、連絡帳、母子健康手帳、通院記録、学校・園とのやり取り、写真・動画、第三者の陳述書等を組み合わせ、具体的事実で裏づけることが重要です。
よくある誤解(親権判断で重視されるのは何か)
親権に関する相談では、次のような誤解が見受けられます。
誤解1:年収が高ければ有利
判断基準は「子の利益」であり、収入の多寡より監護実績・継続性・養育時間の確保・住環境・支援体制が重視されます。家計は「安定運用の計画」で示します。
誤解2:不貞行為があれば必ず不利
不貞行為自体は親権判断の直接要素ではありません。育児放棄や生活崩れなど監護能力への影響がある場合に限り評価されます。
誤解3:先に連れ去った方が有利
無秩序な移動は「継続性」を乱す事情として慎重に見られます。別居後の安定運用と記録化(学校・医療・受渡し・面会履行)で評価されます。
誤解4:子が『どちらが好きか』を言えば決まる
子の意思は一要素です。重要なのは形成過程と安定性、生活事実との整合、第三者資料(学校・医療等)との一致です。
誤解5:調停で合意できなければすぐ訴訟
調停では運用条項(面会交流・情報提供・受渡し)を具体化し、暫定安定を図ることが有益です。訴訟は主張立証の設計と資料整備が整ってから検討します。
養育費・学費負担と親権判断の考え方(混同を避ける)
親権(監護の枠組み)の判断と、養育費・学費等の費用負担は、評価軸が異なります。
親権は「子の利益」を中心に、監護実績・継続性・子の意思・養育時間の確保・住環境・支援体制等の生活面で総合評価されます。
費用負担は、算定表や当事者の収入・必要費用を基礎に経済面で設計します。費用の多寡を理由に親権の適否を導くことは適切ではありません。
共同親権制度の導入に関する注意(施行前の準備)
2024年の法改正により、離婚後の共同親権が導入され、施行は政令で定める日(公布から2年以内)とされています。現時点ではまだ完全施行前ですが、移行期に備えた準備が必要です。
- 制度の枠組み(単独親権と共同親権の選択)
施行後は、離婚時の親権者の定めとして、単独親権と共同親権のいずれかを選択できます。共同親権の下では、教育・長期の医療などの重要事項は原則として父母の合意が必要となり、合意困難な場合は家庭裁判所の判断を求めます。日常の監護・緊急医療等は各親が個別に判断できる運用が想定されます。
- DV・虐待等の事情がある場合の扱い
危険事案では、単独親権とする設計が前提となり得ます。保護命令や保全、面会交流の監視付き・一時停止などの安全配慮を優先し、共同親権を選択しない理由と客観資料を整えます。
- 既に離婚しているケースの扱い
施行後は、既判事の見直しとして親権者変更(共同親権化)を申し立てる運用が想定されます。事情変更の有無、合意形成の実現可能性、情報共有・意思決定手順(ポータル・期限・回答方式)を設計し、条項案を提示します。
- 合意書の再設計(共同親権前提の条項)
共同親権を選ぶ場合は、①重要事項の定義と協議手順、②回答期限とデフォルト運用(未回答時の暫定措置)、③紛争時のエスカレーション(第三者仲介・家裁申立て)、④情報提供の媒体・頻度、⑤面会交流と受渡し、⑥費用分担と清算手順、を条項化します。未回答・長期不在に備えた緊急対応条項(医療・学校事故等)も設けます。
- 主張立証への影響
従来と同様に判断の基軸は子の利益です。監護実績、継続性、子の意思、養育時間の確保、住環境、支援体制を資料で示したうえで、共同親権下でも運用可能な意思決定プロセス(連絡手段・回答期限・代替案)の現実性を具体化します。
(参考:改正民法は2026年5月までに施行予定。制度の骨子・施行時期は法務省資料および各自治体の案内等に基づく。)
父親は不利なのか?
「父親は裁判で不利なのではないか」という不安をよく伺います。
家庭裁判所は父母の性別ではなく、子の利益を中心に個別事情を総合評価します。評価要素は監護実績、生活の継続性、子の意思、養育時間の確保、健康状態、住環境、支援体制などです。
父親が主たる監護者として日常の養育を継続している事例では、父親が親権者に指定された裁判例もあります。
夜勤・長時間労働がある場合でも、勤務調整や家族の支援体制により監護の実現可能性を具体的に示せば、直ちに不利とはいえません。
主張立証では、連絡帳や通院記録、学校・園とのやり取り、送迎記録、生活スケジュール、支援者の関与予定を時系列で整理します。別居後の監護状況を安定させることも重要です。面会交流への誠実な対応は、子の利益の観点から評価に影響します。
子どもの親権を決める流れ
STEP1 当事者同士で話し合う
親権者を決めるとき、まずは夫婦が自分たちで話し合うのが基本です。話し合って合意できれば、円満に離婚と親権の問題を解決できます。
協議で親権者が決まったら、離婚届の用紙に親権者となる親の名前を書き込み、双方が署名押印して役所へ提出しましょう。離婚届が受理されたら正式に離婚が成立し、戸籍においても「離婚届に記載された親」を「親権者」と表記してもらえるようになります。
勝手に離婚届を出されないために
親権争いが発生すると、相手が勝手に離婚届に親権者を記入して役所へ提出してしまうケースが少なくありません。そうなると役所は離婚届を受理してしまい、戸籍上相手が親権者になってしまう可能性があります。偽造の離婚届は無効ですが、無効であることを確認するために調停や訴訟を行わねばなりません。大変な労力と時間がかかってしまうでしょう。
相手による偽造の離婚届提出を避けるため、事前に役所で「離婚届不受理申出」をしておくようお勧めします。離婚届不受理申出をしておけば、申出人の意思確認ができない限り、役所は離婚届を受理しません。
親権争いが起こりそうな気配があるなら、早めに身分証明書や印鑑をもって役所の市民課や戸籍課へ行き「離婚届不受理申出」の書類を提出しておきましょう。
離婚届不受理申出の手順と注意点
相手方が一方的に離婚届を提出するおそれがある場合は、市区町村役場へ離婚届不受理申出を行います。不受理申出は、受理担当者が当事者本人の意思を確認できない限り離婚届を受理しないよう求める制度です。
手順
- 本人確認書類(運転免許証等)と印鑑を持参し、本籍地または住所地の市区町村窓口で「不受理申出書」を提出します。
- 受付控えを保管し、相手方が提出しても受理されない状態を確保します。
- 事情が解消したときは取下げ届を提出して解除します。
注意点
- 不受理申出は、原則として取下げまで有効です。長期化する場合は、協議・調停・訴訟の方針と併行して運用します。
- 子の監護や居所が争点の場合、申出控えや提出日を記録し、後続手続の経過資料として保管します。
- 調停成立や判決確定後は、定められた届出期限(例:判決確定から10日以内)を失念しないよう、役場窓口の開庁日・手続方法を事前確認します。
不受理申出は緊急時の防止策として有効です。提出後は、協議や調停での条件整理、監護の実態に関する証拠化を並行して進めます。
母親が親権者となる場合の注意点
親権者になっても、必ずしも親と子どもの戸籍や姓(名字)が一致するわけではないので注意が必要です。たとえば母親が婚姻時に父親の戸籍に入った場合、母親が離婚して父親の戸籍から抜けても、子どもは父親の戸籍に残ったままになります。母親が旧姓に戻っても、子どもの姓は父親と同じになり、母親と異なる名字になってしまいます。
母親が親権者となったときに子どもの戸籍や姓を自分のものと同じに揃えたかったら、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をしなければなりません。
子の氏の変更許可が認められたら、審判書を役所へ持参しましょう。それにより、子どもの戸籍や姓を母親のものと揃えてもらえます。
STEP2 離婚調停で話し合う
相手との直接の話し合いでは親権者を決められないなら、家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てましょう。
離婚調停が始まると、調停委員が間に入って当事者間の意見を調整してくれます。
それだけではなく、親権に関する対立があると「調査官調査」が行われるのが一般的です。調査官調査とは、家庭裁判所の調査官が子どもの状態や環境、これまでの養育状況などを総合的に調べる手続きです。
たとえば以下のような方法で調査が実施されます。
- 両親からの聞き取り
- 家庭訪問
- 学校や幼稚園への訪問、先生との面談
- 別居親との面会場面を観察(家庭裁判所内の専用スペースにて行われます)
- これまでの養育に関する資料の提出を受けて内容の精査
調査官調査の結果は裁判所へ報告され、その内容をみてさらに話し合いを継続します。
管轄と申立先の確認(どの家庭裁判所に出すか)
親権者指定や監護者指定に関する申立ては、原則として、相手方または子の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
別居開始後に子の居所が変わっている場合は、現に子が生活している場所(学校・園・医療の利用状況を含む実態)を基準に検討します。
相手方が遠隔地に居住する、DV等で移動が困難といった事情があるときは、手続負担や安全確保の観点から、移送の可否を含めて検討します。
相手方の所在が不明なときの対応
相手方の所在が不明な場合でも、手続を進めるための連絡努力の記録と送達手段の検討が必要です。不適切な取得や過度な詮索は避け、合法・必要最小限の範囲で実施します。
連絡先確認(任意調査)
- 直近の住所・連絡先:直近の受渡し場所、学校・園・医療の連絡先に関する自分が正当に保有する資料から時系列で抽出。
- 郵便の到達状況:過去の封書・転送シールの有無、返戻の有無を記録。
- 電子連絡:メール・保護者ポータルの受領有無(既読・自動返信)をスクリーンショットではなく公式出力で保存。
- SNS・メッセンジャー:公開情報の範囲で最新の居住地示唆がないか確認(侵入・なりすましは禁止)。
公的資料の取得
- 住民票・戸籍の附票の取得可否を弁護士と確認(請求根拠・利害関係の整理)。
- 職場・在籍先が判明しているときは、内容証明で在籍確認・連絡先の提供依頼(回答期限付き)。
所在不明時は、闇雲に探すのではなく、合法・可視化・即応性の3点を徹底します。調査経過と送達手段の選択を文書で可視化することで、期日の遅延と無用な摩擦を抑制できます。
調停が成立したら親権者が決まって離婚できる
調停段階で、親権やその他の離婚条件が決まれば調停が成立します。この場合、調停成立後2、3日で家庭裁判所から調停調書が送られてくるので、役所へ持参して離婚届を提出しましょう。そうすれば親権者を定めて離婚できます。
ただし離婚届は「調停成立後10日以内」に提出しなければなりません。提出する側になった場合には早めに役所へ持参して離婚の届出をしましょう。
調停が不成立になると親権者は決まらない
離婚調停はあくまで話し合いの手続きであり、当事者へ結論の強制はできません。調査官調査の結果、どちらかの親が親権者として妥当であると考えられる状況でも、相手が納得しなければ成立させられないのです。
調停委員が説得したりして当事者の合意を目指しますが、どうしても合意できない場合には不成立になってしまいます。その場合、親権者は決まらず離婚もできません。
親権者指定調停について
離婚調停に付随して親権者指定調停を申し立てることができます。
親権者指定調停は、合意形成が困難な場合に親権者の枠組みだけを裁判所の判断で先に定め、当面の生活の安定を図るための手続です。
話し合いでまとまらなければ審判に移行し、裁判所が親権者を指定します。審判には不服申立て(即時抗告)が認められており、最終解決とならない場合もありますが、子の生活環境の継続性を確保する観点から一定の実務的意義があります。
使い分けの目安として、①監護状況がすでに一定程度安定しており、当面の枠組みを早期に明確化したいときは親権者指定調停(→審判)が適します。②監護実績や居住・学校環境、支援体制などについて詳細な主張立証が必要で、証人尋問や鑑定の可能性が見込まれるときは、離婚訴訟で包括的に判断を求めることを検討します。③条件調整が中心で合意の余地がある場合は、離婚調停を基軸としつつ、面会交流や情報提供の運用まで含めた合意形成を進めます。
いずれの手続でも評価基準は「子の利益」です。
提出資料(監護実績の記録、学校・医療の連絡体制、住環境、支援者の関与計画など)を整理し、当面の生活の安定と長期的な養育可能性の双方を具体的事実で示すことが重要です。審判で暫定的な枠組みが定まった後に、事情変更が生じた場合は、条件の見直しや訴訟への移行を検討します。
調停申立ての必要書類と準備物
調停の申立てでは、定型書類に加えて個別事情を示す資料を整える必要があります。以下は主な書類と準備物です。
・申立書
申立ての趣旨と理由を記載します。親権者指定や監護者指定など、求める判断を明確に記載します。
・事情説明書
家族構成、別居時期、監護状況、収入・住居、面会交流の状況など、経過を時系列で記載します。専門用語は避け、具体的事実で整理します。
・戸籍謄本等
親子関係および婚姻関係を確認する資料です。最新のものを用意します。
・収入・就労資料
源泉徴収票、給与明細、就労証明書等です。養育費の負担可能性や生活の安定性を示します。
・住居に関する資料
賃貸借契約書、間取り図、通学経路の概要等です。生活環境の安全性や通学利便性を示します。
・監護実績の記録
連絡帳、母子健康手帳、園・学校との連絡履歴、通院・予防接種の記録、送迎の記録、写真・動画等です。日付が分かる形で提示します。
・第三者の陳述書
保育士、教員、親族等の客観的な観察に基づく陳述です。評価ではなく具体的事実の記載にとどめます。
・子の生活スケジュール案
平日・休日の監護計画、支援者の関与時間、学校行事への対応等を記載します。実現可能性を重視します。
これらは全てを提出しなければならないわけではありませんが、監護の継続性と具体的実績、今後の監護体制を裏づける資料を中心に構成すると説得力が高まります。提出前に個人情報のマスキングや原本・写しの別を確認します。
STEP3 離婚訴訟で裁判所に指定してもらう
離婚調停が不成立となった場合には(親権者指定審判に不服申立があった場合も含む)、親権も決まらず離婚もできません。
親権者を決めるには、家庭裁判所で離婚訴訟を申し立てる必要があります。
離婚訴訟は調停と異なり、話し合いの手続きではありません。裁判官が提出資料や調査官調査の結果をみて、親権者として適切と判断する親を親権者として指定します。
親権者指定審判とは異なり、当事者が異議申し立てする方法もありません。判決が確定したら、確実に親権者が決まります。
離婚訴訟で親権を獲得するには、裁判所の親権者判断基準を理解して、なるべく親権者として有利にはたらく条件を整えなければなりません。
主張立証の設計(骨子と順序)
訴訟では、主張と証拠の順序を固定し、論点の脱漏を避けます。基本骨子は次のとおりです。
1.争点の画定
親権者指定の可否、監護権の分離の要否、面会交流の在り方を区分します。周辺論点(養育費・情報提供)は別見出しで整理します。
2.評価枠組みの提示
子の利益を中心に、監護実績、継続性、子の意思、養育時間の確保、健康状態、住環境、支援体制、兄弟姉妹不分離の要素を示し、事案に即した重み付けを明示します。
3.事実の主張(時系列)
別居前後の監護状況、学校・医療対応、受渡し、面会交流の履行状況を、月次の出来事と添付資料で対応づけます。
4.証拠の提示方法
甲号証管理表を先頭に置き、各主張段落の末尾に「根拠:甲◯・甲◯」と通し番号で紐づけます。写真・動画は撮影日を特定し、第三者資料は作成者・期間を記載します。
5.反論への先回り
就労時間、引越し、保育支援の有無など想定反論を列挙し、実現可能性と代替手段(シフト調整、支援者の固定化等)で応答します。
6.救済の具体化
主文案を簡潔に示します。例:「原告を親権者に定める。面会交流は第2・4土曜10時〜17時、受渡場所◯◯駅改札。」必要に応じて、監護権の分離や情報提供方法も併記します。
文面は「結論→事実→資料」の順に統一します。評価語は抑え、観察事実と文書で裏づけます。新事実が生じた場合は提出期限を確認し、補充書面で追加します。
訴訟の費用と期間の目安
親権を訴訟で争う場合、費用と期間は事案の複雑性と手続上の選択によって大きく変動します。費用は概ね、弁護士費用(着手金・報酬金またはタイムチャージ)、実費(日当・収入印紙・郵券・記録謄写費等)、鑑定費用、証人・当事者の旅費等で構成されます。争点が多岐にわたる、鑑定が実施される、証人尋問が複数回に及ぶといった事情があると総額は増加します。当事務所はタイムチャージ制(1分単位・月次精算)を採用しており、作業内容ごとの内訳を提示します。
期間の目安は、家庭裁判所での第1審に限っても半年から1年超まで幅があります。期日間隔、家庭裁判所調査官の調査の有無と回数、和解を検討するか否か、鑑定の要否、相手方の主張立証の分量などが主な要因です。和解により早期に集中的に合意形成を図る場合と、主張立証を尽くして判決を得る場合とでは見通しが異なります。
調査官調査の重要性
離婚訴訟で親権を獲得したいなら、調査官調査の重要性を理解しておく必要があります。
離婚調停の段階で調査が行われなかった場合はもちろん、離婚調停でいったん調査が行われていても、訴訟段階になるとあらためて調査が実施されるのが一般的です。
親権を取得したいときの調査官調査への対応ポイント
調査官調査では、以下のようなことに気をつけてください。
調査に協力的な姿勢をみせる
調査官調査が行われるときには、家庭裁判所へ呼び出されて調査官との面談を実施する例が多数です。このとき、「忙しい」「日程が合わない」などといって非協力的な姿勢をみせると印象が悪くなってしまいます。
時間に遅れた場合にも悪印象を与えるので、きちんと時間を守って家庭裁判所へ出頭しましょう。
マナーや態度は丁寧に
調査官と話すときのマナーや態度にも注意すべきです。
子どもの親権問題が起こるとどうしても感情的になってしまい、調査官に対して声を荒げたり怒鳴ったりしてしまう方も少なくありません。しかし感情的になっても良い印象をもってもらえるわけではないので、冷静に対応しましょう。調査官調査の際の服装は常識的な格好をして、挨拶などの基本的なマナーも守ってください。
育児に関わってきた資料を積極的に提出
これまであなたが育児に関わってきたことがわかる資料を積極的に提出しましょう。調査官に実情をわかってもらうには、当事者による丁寧な説明と資料が必須です。
どういったものが必要かわからない場合には弁護士に相談してみてください。
証拠チェックリスト
親権の主張立証では、抽象的な評価より具体的事実を積み上げることが重要です。提出前に以下を点検します。
監護実績
連絡帳、母子健康手帳、通院記録、予防接種、学校・園からの配布物への記入、宿題・行事への関与が分かる資料を日付入りで整理します。
生活スケジュール
平日・休日の監護時間帯、送迎経路、支援者の関与時間を一覧化します。実現可能性を示します。
住環境
賃貸借契約書や間取り、子の学習・就寝スペースの写真、通学距離や所要時間の説明資料を添付します。
健康・安全管理
服薬管理表、アレルギー対応、事故防止の措置、緊急連絡体制の記録を提出します。
教育・発達
成績通知、面談記録、療育・支援の利用状況、担任や支援員の客観的メモを収集します。
収入・就労
源泉徴収票、給与明細、就労証明書、勤務シフトを提出し、監護時間の確保計画と併置します。
第三者陳述
保育士・教員・医療職・親族等の陳述書を客観事実中心に作成します。評価や推測は避けます。
コミュニケーション
相手方との連絡履歴、面会交流の実施状況、トラブル時の対応記録を時系列で示します。
写真・動画は撮影日が分かる形で提出します。個人情報は必要範囲に限定し、原本・写しの別と通し番号を明記します。
子どもへの愛情やこれまでやってきたことを積極的に表現する
これまで育児に携わってきた経緯や自分が日頃どのような対応をしているのか、子どもへかける愛情や今後の養育方針など、調査官へ積極的に表現しましょう。
話すのが不得意な方は、面談前にメモを作るなど資料化しておくようお勧めします。弁護士がついていれば弁護士も面会場面に同席し、助言できます。不安な方はぜひ相談してみてください。
訴訟の判決で親権者が決まったら、判決書と確定証明書を役所に持参すれば親権者を定めて離婚できます。
裁判で親権を得られなかった場合の現実的な選択肢
判決や審判で親権者に指定されない場合でも、子の生活と関与を維持するために取れる手段があります。
面会交流の具体化
頻度・時間帯・受渡し方法・オンライン併用・学校行事への参加などを明確化します。履行状況は記録化し、必要に応じて条件変更を申立てます。
監護権の分離
親権は相手方としつつ、日常監護は申立人が担う形を検討します。子の生活安定や通学事情に即して運用します。
情報提供・学校連絡
就学・医療・進路等の重要情報の共有方法を取り決めます。連絡帳やポータルの閲覧範囲を合意して可視化します。
養育費と費用分担
金額・支払日・振込方法・臨時費用(医療費・学用品)の按分を定め、支払証跡を保管します。
親権者変更の検討
事情変更(監護環境の悪化、継続性の崩れ、子の意思の安定した変化等)が生じた場合は、証拠を収集し親権者変更を申立てます。
これらを合意書に落とし込み、履行状況を継続的に記録します。状況が変化したときは、子の利益を最優先に条件の見直しを検討します。
親権者変更の申立て
親権者に指定されなかった場合でも、判決・審判後に事情変更が生じたときは、親権者変更を申し立てます。事情変更とは、結論を左右し得る程度に重要で、予見困難または当時想定外の変化を指します。
主な事情変更の例
- 監護環境の悪化:転居の反復、同居者の変更、学校不就学、衛生・安全管理の不備が継続する場合
- 継続性の崩れ:長期別居化、実質的監護者の交代、子の生活リズムの大幅な乱れ
- 子の意思の安定した変化:学齢の進行や継続的な面接調査結果により一貫した意思が示される場合
- 監護時間の確保に関する変動:勤務形態の恒常的変更、支援者の喪失または確保により実現可能性が変わった場合
よくある質問
Q.別居や連れ去りは親権判断にどう影響しますか
別居の経緯と別居後の監護状況が評価対象です。連れ去り(相手方の同意なく子を移動させる行為)は「子の生活の継続性」を乱す事情として慎重に見られます。他方で、別居後に子の生活が安定し、学校や園、医療、友人関係が維持されている場合は、現状維持の適否が検討されます。評価は一面的ではありません。別居の必要性、移動時の安全配慮、別居後の監護実績、面会交流への対応を時系列資料で示すことが重要です。
Q.不貞行為は親権で不利になりますか
不貞行為そのものは原則として親権判断の直接要素ではありません。親権は「子の利益」を中心に決まります。不貞と監護能力の低下が具体的に結び付く事情(深夜外出の反復、育児放棄、家計の著しい不安定化など)があるときは影響し得ます。他方で、監護実績が安定し、子の生活に支障がない場合は、直ちに不利とまではいえません。主張立証では、育児の実態、生活リズム、学校・医療対応の記録を客観資料で裏づけます。
Q.親権と監護権は何が違いますか
親権は身上監護権と財産管理権の総称です。監護権は子どもの日常的な養育と身の回りの監督に関する権限です。家庭裁判所は事情に応じて、親権者と監護者を別の親に定めることがあります。対立が先鋭化しやすい事案では、当面の生活安定を優先し、監護権を分けて運用する選択肢があります。学校・医療・進路など重要事項の決定方法や情報共有の手順を合意書に明記し、紛争の再発を抑制します。
親権者争いが生じたらDUONまでご相談ください
離婚時、両親のどちらが親権者となるかで子どもの人生が大きく変わるケースが多々あります。相手に親権を渡したくないなら、当初の段階から適切な対応をとらねばなりません。
当事務所では、離婚・親権分野を担当経験のある弁護士が継続的に対応します。費用はタイムチャージ制(1分単位・月次精算)とし、作業内容ごとの内訳を明示します。親権・監護、面会交流、養育費、財産分与、保全手続まで一体的に検討し、事案の優先順位に沿って対応します。
DUONではこれまで、離婚に悩む多数の方々をサポートし続けて参りました。親権争いを解決したケースも枚挙にいとまがありません。茨城県周辺エリアで親権をとれるかどうか不安を抱えている方は、お早めにご相談ください。






















